口腔上皮から発生する胎仔マウス顎下腺では、顎下腺特有の形態と機能の確立に上皮間葉相互作用が必須です。しかし、その全貌は未解明のままです。 胎生期15日(E15)前後の顎下腺上皮では唾液分泌に関連した遺伝子群が劇的に発現し始めます。つまり、未成熟な上皮がE15を境に機能的な分化を開始し、「顎下腺らしい上皮」へと変貌していきます。本研究計画では、顎下腺の間葉から上皮へとマイクロRNAが輸送されていることを踏まえ、この「マイクロRNAシグナル」が顎下腺の機能的分化のタイミングを調整していると仮説を立てました。機能的分化ではゲノムDNA上に施される修飾が変化するはずです。そこで、この修飾の変化(DNA脱メチル化)を担う酵素TET1-3の発現パタンを最初に調べました。その結果、各TETの発現パタンは異なること、特にE15を境に発現パタンが変化するTETを見出しました。同様に、脱メチル化の指標である5-hmcについてもE15前後の変化を見出しました。マイクロRNAの中にはTET1-3を標的遺伝子としうる種類が含まれており、これらはTET発現を調節していることが示唆されました。また、本年度は口腔上皮に高発現している遺伝子がマイクロRNAによって抑制されている可能性も見出しました。つまり間葉から上皮へと輸送されるマイクロRNAは、顎下腺上皮には必要のない口腔上皮の遺伝子群を抑制している可能性が考えられました。
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