ポドサイト(足細胞)のスリット膜は血漿タンパク質の尿中への漏出を防ぐバリア機能を持つ。スリット膜は足細胞の発生期に形成され、病態時に消失・再生するのだが、これら3つの過程の形態的プロセスは断片的にしか理解されていない。そこで、本研究では、電顕3D再構築法(FIB/SEMトモグラフィー)を活用し、「スリット膜の形成・消失・再生」の形態プロセスを立体的に完全解明する。本年度はポドサイトの病態時におけるスリット膜の消失過程について、FIB-SEMトモグラフィーにより解析を行った。病態モデルとしては、ラットのネフローゼ症候群モデル(PAN腎症)を用いた。病態の進行によりスリット膜はほぼ失われ、ポドサイト同士はタイト結合のみで連結するようになる。このような細胞間結合装置の変化に伴い、ポドサイトの突起構造も大規模に「改築」されるが、この改築過程をこれまでになく詳細に解析できた。 1)3D再構築像で見た足突起消失:消失過程には2つの様式があり、1型過程では足突起の太さが不均一になりつつ短くなる。2型過程は足突起が全長にわたって均一に細くなりつつ短縮してゆく。 2)足突起消失に付随する変化: ・自己細胞間結合の形成:PAN腎症では自己細胞間タイト結合が高頻度に形成され、正常な構造への完全な回復を妨げている可能性がある。 ・断片化と断片脱落:ポドサイトは様々な大きさの断片を形成される。形成初期には糸球体基底膜に接着しているが、やがて変性し、尿中へ脱落する。 さらに、上記の成果の他に、FIB-SEMトモグラフィーによるポドサイト解析に関する詳細なプロトコル論文も数編出版できた。
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