研究課題/領域番号 |
17K08523
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
萩原 治夫 帝京大学, 医学部, 教授 (80189464)
|
研究分担者 |
有澤 謙二郎 帝京大学, 医学部, 助教 (40582846)
田中 秀幸 帝京大学, 医学部, 講師 (70343085)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 基底小体 / 中心子 / striated rootlet / striated connector |
研究実績の概要 |
一次線毛は、母中心子の遠位端から伸長する。母中心子すなわち基底小体とそれとペアをつくる娘中心子は、横紋を示す線維状構造(striated connector)で連結し、striated rootletと同様にrootletin分子が存在することが知られているが、これ以外の構成分子については不明な点が多い。本研究は、striated connectorの新たな構成分子、形成機構、機能について解明し、基底小体と付随中心子の連結機構を明らかにすることを目的にしている。 平成29年度は主に既存の中心体構成分子(CEPなど)、線毛関連分子(ARL、tubulinなど)などに対する抗体およびrootletin認識抗体(R67)を用いて、免疫組織化学的手法によりstriuated connectorあるいいはstriated rootletに局在する新たな分子の解明に取り組み、現時点では、rootletinと局在が重なる分子としてARL13BとC-Nap1の2つを見いだすことができた。C-Nap1については、striated rootletが基底小体から伸長するときに重要な役割を演じていることがすでに知られているが、rootletinとC-Nap1の局在についての解析で、細胞分裂時のrootletの消失過程におけるC-Nap1の新たな機能についても明らかにすることができた。今後その成果を学会等で発表する予定である。ARL13Bのルートレットへの局在に関しては、偽陽性反応の可能性もあるので、分子生物学的手法を利用してさらに詳細に解析を進めている。また、これらの研究に関連して、母中心子(基底小体)と娘中心子の可視化に利用したtubulin分子、およびTAT1分子の局在解析からTAT1分子の細胞内局在について興味ある知見を得ることもできた。この知見に関しては論文として成果をまとめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Striated rootletもstriated connectorも、基底小体(母中心子)と娘中心子に連結する構造なので、中心子周囲領域に局在が知られている分子の中から、これらの構造に局在する分子を見つけ出すことを主な目的として、初年度の計画が立てられた。研究はおおむね順調に行われ、CEPを中心に約50種類の分子について追及し、rootletinと局在が重なる分子としてARL13BとC-Nap1の2つを確認することができた。C-Nap1とrootletの関係についてはすでによく知られているが、rootletの消失におけるC-Nap1の新たな働きを見出すことができた。ARL13Bのrootletへの局在に関しては、抗体の偽陽性反応の可能性もあるので、分子生物学的手法の追加など、さらなる詳細な解析が必要であると考えている。R67抗体を用いた免疫沈降実験によるrootletin局在分子の解明については、実験に用いる試料を現在調整中である。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究でARL13Bがrootletinと共局在する可能性が考えられたので、免疫組織化学のコントロール実験や分子細胞生物学的手法を用いて、さらに解析を進める。またrootletin と相互作用の可能性のある分子をデータベースから探索して拾い上げ、免疫組織化学的に局在を追求する。 既存の分子に対する抗体を利用した解析には限界があるので、抗rootletin抗体、R67抗体を用いて免疫沈降実験を行い、共沈してくる分子群の質量分析などによってstriated connectorやstriated rootletの構成分子を明らかにする。あらかじめrootletinを強制発現した細胞から基底小体を含む分画を調整し、これを免疫沈降実験に用いる。解析用に充分な試料が得られない場合は、実験動物の線毛上皮からrootletを含む試料を調整する。 Rootletinと相互作用していると考えられた分子については、striated connector、striated rootletへの局在を免疫組織化学的に確認し、さらに免疫電顕法により細胞内局在を明らかにする。Striated connectorあるいはstriated rootletに特異的に発現する新規分子が特定されたら、これらの分子に対するノックダウン実験を行い、基底小体からの線毛伸長に及ぼす効果、ルートレットなどの基底小体付属構造形成に及ぼす効果、二つの中心子のペア化、紡錘体や微小管形成に及ぼす効果について細胞生物学的手法および分子細胞生物学的手法を用いて解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費として、抗体、薬品、実験調整薬やプラスチック器具などの消耗品の購入に1100000円を計上していたが、100679円の次年度使用額が生じた。研究は全体的におおむね予定通り進んだが、免疫沈降実験の試料の調整に時間を要したため、免疫沈降実験計画にやや遅れが生じている。免疫沈降実験に予定していた一部の消耗品の購入をしなかったため、100679円の次年度使用額が生じた。この繰越額は、平成30年度に予定していた免疫沈降実験とそれに引き続くタンパク質の解析実験の経費の一部として使用することを計画している。
|