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2017 年度 実施状況報告書

腸内細菌代謝産物による消化管ホルモン分泌調節メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K08529
研究機関東京大学

研究代表者

坪井 貴司  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80415231)

研究分担者 北口 哲也  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (60432374)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード生理学 / シグナル伝達
研究実績の概要

糖尿病や認知症、自閉症などは、腸内細菌叢の機能異常によって発症する例が報告されている。しかし、腸内細菌代謝産物が、どのようなメカニズムで糖尿病や認知症、自閉症などの疾患発症に関与しているのかは不明である。小腸内分泌L細胞(以下L細胞)は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を分泌する。このL細胞からのGLP-1分泌は、食餌由来の物質を細胞が感受することで起こる。しかし、食餌成分と同様に消化管内に存在する腸内細菌代謝産物による消化管ホルモン分泌への影響については、検証されていない。
空間学習試験成績上位、中位、下位のマウス糞便をメタボロミクス解析したところ、有意差のある腸内細菌代謝産物50種類を検出した。そこで、これら合計50種類の腸内細菌代謝産物を腸内細菌代謝産物ライブラリーとして用いた。そして、小腸内分泌細胞株GLUTag細胞およびSTC-1細胞に腸内細菌代謝産物ライブラリーを投与した際のGLP-1分泌への影響をELISAによって解析した。その結果、5種類の代謝産物によってGLP-1分泌が誘導されることがわかった。次に、細胞内セカンドメッセンジャーであるカルシウムの細胞内濃度測定を行ったところ、代謝産物の投与によって細胞内カルシウム濃度が上昇することが分かった。次に、ペプチドホルモンに蛍光タンパク質を融合させたプラスミドをGLUTag細胞へ遺伝子導入し、実際の生きた細胞からのGLP-1分泌動態のリアルタイムでの可視化解析に成功した。そして、GLP-1分泌を誘導することが分かった5種類の代謝産物を投与したところ、それぞれの代謝産物によって分泌顆粒の分泌動態が異なることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、培養細胞レベルでの検証を行い、GLUTag細胞において5種類の腸内細菌代謝産物によって細胞内カルシウム濃度の上昇、さらにGLP-1の開口分泌が引き起こされることを確認できた。また、全反射蛍光顕微鏡を用いて、GLP-1分泌反応の可視化解析にも成功した。しかし、当初予定していた、腸内細菌代謝産物により引き起こされるGLP-1の分泌量のELISAを用いた定量的な解析を十分回数行うことができていない。そのため、当初計画よりも研究進捗がやや遅れている。

今後の研究の推進方策

来年度以降は、マウス個体から急性単離した小腸組織において、腸内細菌代謝産物がGLP-1分泌に与える影響を検証する。さらに、次世代シークエンサーを用いて、GLUTag細胞に発現している各種受容体、チャネル、トランスポーター、ホルモン受容体の網羅的遺伝子発現解析を行う。また、GLP-1分泌機能への影響を調べていない腸内細菌代謝産物について、カルシウムイメージング、全反射蛍光顕微鏡を用いたGLP-1分泌反応イメージング、そしてELISAを用いた定量的解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、腸内細菌代謝産物を小腸内分泌細胞に投与し、GLP-1分泌量を測定する実験系の構築および測定条件を決定することに手間取ってしまった。そのため、当初予定していたGLP-1分泌量を測定するためのELISAを必要回数を行うことができなかった。そこで、次年度は、これまで解析ができていないGLP-1分泌量の測定をELISAを用いて解析する予定である。また、解析を進めていない他の腸内細菌代謝産物のGLP-1分泌反応への影響を全反射蛍光顕微鏡を用いて解析し、影響の見られた代謝産物については、ELISA解析を行う予定である。

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公開日: 2018-12-17  

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