研究課題/領域番号 |
17K08530
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 倫子 北里大学, 医学部, 教授 (60332178)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生理学 / 神経細胞 / 分泌機構 / 神経伝達機構 / 蛍光技術 / 顕微鏡 / 蛍光寿命画像 |
研究実績の概要 |
2光子励起による蛍光寿命画像法(FLIM)と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて、開口放出関連蛋白質の複合化を生体組織内で定量的に観察することを目指している。脳スライス標本において、シナプス後部細胞からの力学的ストレス(物理的刺激・浸透圧刺激など)が、シナプス前終末における膜融合関連蛋白(SNARE)の複合化を調節する事実をグループで把握し、FAOPS(2019年3月)を初めとする学会発表を行った。同様の実験を海馬単離培養標本でも施行して結果を確かめるために、培養標本の調整やプラスミド導入の条件だしを行った。 さらに高解像での観察が可能となるSTEDの併用も試み、2種類のSNAREを2種類の色素であるEGFPとTMR(tetramethylrhodamine)で標識し、海馬培養神経細胞に発現させることにより、FRETの検出に成功した。しかし、TMRにはSTED効果が乏しく、ドナーとアクセプターの解像度の違いから単純な蛍光比取得には問題が残ると結論された。一方で、別の赤外領域の蛍光色素(市販)で顆粒膜SNARE(VAMP2)や細胞膜SNARE(SLIM)を標識したところ、775nmのSTED光にて超解像構造が確認され、蛍光減衰も単調に(single exponential に)起きることから、FRETのドナー色素として活用できる可能性が提示された。 このほか、インスリン顆粒膜を蛍光標識し、FRET実験に供するために、タグ蛋白とそのリガンドに結合した量子ドットを用いて、新たな蛍光標識法の立ち上げにも着手した。インスリン分泌細胞において、平均直径380 nm 前後の点状蛍光像が確認され、抗体染色から測定されたインスリン顆粒の大きさに合致しており、動態解析に適するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者の所属変更に伴い、2光子顕微鏡を自ら使用する機会は減ったが、研究自体は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
超解像顕微鏡の併用活用も視野に入れながら、生体において重要な力学的ストレスと神経伝達物質の放出準備状態の関連について、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度(初年度)に研究室移転を行い、当初計画していた研究費の支出ができなかったため。
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