2光子励起による蛍光寿命画像法と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて、開口放出関連蛋白質の複合化を生体組織内で定量化をはかっている。東京大学大学院医学系研究科との共同研究を継続し、ラットの脳スライスおよび単離培養標本において、シナプス後部細胞からの力学的ストレス(物理的刺激・浸透圧刺激など)が、シナプス前終末における膜融合関連蛋白(SNARE)の複合化を調節する事実をグループで把握した。日本生理学会の企画シンポジウムにて2020年3月誌上発表を共同で行った。同様の検討を単離神経培養標本においてもできるよう実験系を立ち上げている。従来より、シナプス結合の強さはシナプス後部構造スパインの物理的な増大や形態変化に由来すると考えられてきた。このスパイン増大がシナプス前終末に力学的作用を及ぼし、SNARE分子群をはじめとする放出関連蛋白質の複合化を促し、伝達物質放出確率を制御する仮説を支持する。 このほか、インスリン顆粒膜を生きた細胞で標識する実験系も立ち上げ、将来的には細胞骨格などとの相互作用を見るために蛍光共鳴エネルギー移動FRET実験に供する目的を持っている。顆粒膜発現蛋白をTag蛋白で標識し、そのリガンドに結合した量子ドットあるいは蛍光標識したTagリガンドを用いて、インスリン分泌細胞の顆粒動態を追跡する。高速共焦点顕微鏡を活用した実験系であり、拡散係数や能動性を定量化する実験系の構築に成功し、一部薬剤の効果を認めている。
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