研究課題/領域番号 |
17K08531
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤井 拓人 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50567980)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | カチオン輸送ポンプ / ATP13A2 / パーキンソン病 / リソソーム |
研究実績の概要 |
パーキンソン病の病因遺伝子として同定されたATP13A2(Park9)は、その構造からカチオン輸送ポンプであると推定されているが、その輸送イオン種およびイオン輸送メカニズムについてはこれまで未解明である。本研究は、神経細胞リソソームにおけるATP13A2のイオン輸送機構の全容、およびATP13A2のイオン輸送機能異常が関与する新規のパーキンソン病発症メカニズムを明らかにすることを目的としている。加えて、ATP13A2を標的とした新たなパーキンソン病治療法の開発基盤の構築を目指す。 本年度はまず、遺伝子クローニングしたヒトおよびマウスATP13A2をヒト胎児由来HEK293細胞に過剰発現させ、様々なカチオンおよびpH条件下で解析を行い、輸送イオン種の探索を行った。ATP13A2の発現に伴い上昇したATPase活性は、反応溶液中からK+を除去することで消失したことから、ATP13A2がK+輸送性のカチオンポンプとして機能する可能性が示唆された。また、ATP13A2由来のATPase活性は、弱酸性条件において上昇した。次に、パーキンソン病患者において報告されている各種点変異体(A746T、R449Q、G533R、R980H)を作製し、ATP13A2の発現と機能変化について検討した。G533RおよびR980H変異体では、ATP13A2の発現レベルが顕著に減少した。他方、A746TおよびR449Q変異体では、K+依存性のATPase活性が減少する傾向が見られた。以上、本年度の研究成果より、ATP13A2の発現量およびK+輸送機能の抑制が、パーキンソン病の病態と関連している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、ATP13A2の機能解析を行うための発現系の構築およびパーキンソン病に関連する各種点変異体の作製を行い、ATP13A2のイオン輸送解析を行うことで、K+がATP13A2の輸送イオン種の候補であること、ATP13A2のloss of functionがパーキンソン病に関連している可能性を見出した。従って、本年度の計画として予定していた、ATP13A2の輸送イオン種の解明およびATP13A2とパーキンソン病との関連性についての研究は、順調に進んでいると考える。単離リソソームを用いたATP13A2のイオン輸送解析については、次年度に行う予定である。また、本年度に構築したATP13A2発現系およびK+依存性ATPase活性の評価方法は、今後の実験計画として予定しているATP13A2のイオン輸送機能を抑制・促進させる薬物のスクリーニング、およびATP13A2の機能を調節する関連分子の探索において有用である。以上、総合的に、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
ATP13A2の属するP型カチオンATPaseファミリーの多くは、異なる2種類のカチオンを対向輸送することが知られている。従って、生体内に存在する微量金属イオンを輸送する可能性も考慮にいれ、K+のカウンターカチオンの探索を行う。合わせて、ATP13A2がK+を膜輸送することを実証する。また、リソソームを精製し、放射性同位体を用いたトレーサー実験等を行うことで、リソソーム膜を介したATP13A2のカチオン輸送機構の詳細を明らかにする。ATP13A2の活性を低下もしくは上昇させる薬物スクリーニング、およびATP13A2の活性や発現を調節する生体内分子の探索も行う。さらに、初代培養神経細胞およびパーキンソン病モデルマウスを用いて、パーキンソン病におけるATP13A2の病態生理機能の全容解明およびATP13A2を標的とした新たなパーキンソン病治療法の開発を目指した基礎研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は204円の残額が生じたが、これは研究計画の変更や進行状況の変化等によるものではなく、204円以下の物品の購入を希望しなかったためである。 (使用計画)次年度において、物品請求費の一部として活用する予定である。
|