研究課題
1) 心筋の虚血再灌流傷害のトリガーと考えられている活性酸素種の一つである過酸化水素(H2O2)を作用させると、マウスの正常心室筋細胞と比較して、TAC(transverse aortic constriction)手術により惹起された肥大心室筋細胞において、有意に遅延後脱分極とそれに伴う撃発活動の発生頻度が増加した。遅延後脱分極は細胞内Ca2+過負荷とそれに伴う筋小胞体リアノジン受容体(RyR2)からのCa2+放出により出現するため、細胞内Ca2+過負荷の程度を示す細胞レベルでの指標となる。よって、本実験結果は、肥大心室筋細胞では正常心室筋細胞と比較して、虚血再灌流傷害の背景となるH2O2による細胞内Ca2+過負荷がより高度に起こっていることを示唆している。さらに本実験結果は、肥大心において、虚血再灌流傷害に対する脆弱性が亢進していることも示唆している。2) TAC手術により作成されたマウス肥大心室筋細胞にCa2+/CaMKIIの阻害剤であるKN-93を投与すると、H2O2による撃発活動の発生頻度は有意に減少した。一方、KN-93の不活性化アナログであるKN-92を投与しても撃発活動の発生頻度は影響を受けなかった。この実験結果は、肥大心室筋細胞においてCa2+/ CaMKII の機能亢進が起こっており、そのことがH2O2による細胞内Ca2+過負荷の惹起に関わっていることを示唆する。Ca2+/CaMKII はリアノジン受容体をリン酸化して筋小胞体からのCa2+放出を促進して、細胞内Ca2+過負荷を引き起こすことが知られている。これらのことを総合すると、肥大心ではCa2+/CaMKII の機能亢進が発生し、それにより虚血再灌流時に筋小胞体からのCa2+放出が亢進して、正常心と比較してより高度のCa2+過負荷やそれに伴う心筋傷害が発生しやすいことが考えられた。
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