研究課題
Ⅰ. 海馬におけるシナプス可塑性の分子機構の解明1) グルタミン酸受容体結合タンパク質による海馬CA1領域におけるシナプス可塑性の制御機構の解明:グルタミン酸受容体とコンプレックスを形成するタンパク質の一つであるGRASP1がグルタミン酸受容体のシナプスへの輸送の障害のため、シナプス形成、シナプス可塑性、記憶・学習に障害をきたすことが遺伝子変異マウスの解析から明らかとなった。2) AMPA型グルタミン酸受容体の細胞外ドメインと結合する因子の探索ならびに機能解析:2種の細胞にそれぞれグルタミン酸受容体とラット脳から作成されたcDNAライブラリーを発現させ、各々が結合するスクリーニングシステムを開発中であるが、バックグラウンドが高く、現在最適の条件を検討中である。さらに細胞外からマウス脳から抽出したペプチドの分画を添加することによりグルタミン酸受容体のチャンネル活性やシナプスへの局在などに影響を与えるペプチドを同定するためにスクリーニングシステムを構築中である。3) AMPA型グルタミン酸受容体GluA1欠損マウスにおけるウイルスベクターを用いたLTP(長期増強現象)レスキューによるシナプス可塑性の分子機構の解析:海馬においてGluA1欠損マウスは、 LTPを完全に欠如する。このマウスにレンチウイルスベクターを用いて欠損させたGluA1を再度発現させることで、LTPのレスキューに成功した。このシステムを用いて、細胞外の糖鎖修飾を欠損した受容体を発現させたところLTPが異常をきたすことがわかった。Ⅱ. シナプス可塑性の疾患関与への展開1) 扁桃体依存性の恐怖記憶の形成とストレス対応のメカニズムならびに、うつ病への関与:正常マウスを使用して、恐怖記憶学習のシステムの構築を行った。
3: やや遅れている
細胞外においてグルタミン酸受容体に結合する分子をスクリーニングするシステムの構築が、なかなか困難で予想より実験の進行が遅れている。そのため、グルタミン酸受容体に影響を及ぼすペプチドのスクリーニングシステムの構築を先に行っている。恐怖学習システムは、比較的簡単にできたが、これをうつ病研究まで展開することに時間を要している。
各システム(グルタミン酸受容体との細胞外結合タンパクスクリーニング、グルタミン酸受容体のチャンネル活性に影響を与えるペプチドのスクリーニングシステム)を軌道に乗せ、詳細な解析を行う分子を特定する。また現在並行して行っているグルタミン酸受容体の細胞外糖鎖修飾のシナプス可塑性における機能解析とあわせて相互情報交換やシステムの共有をすることで、研究を発展させる。
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Neuron
巻: 93 ページ: 1405-1419
10.1016/j.neuron.2017.02.031