研究課題
これまでにシナプス可塑性の発現において中心的役割を果たすAMPA型グルタミン酸受容体の修飾によって、シナプス可塑性を中心とする神経機能がどのように制御されているのかを解析してきた。特にAMPA型グルタミン酸受容体の細胞外ドメインのN型糖鎖修飾がAMPA型グルタミン酸受容体の機能にどのように影響を与えているかを中心に研究を行なった。現在までにAMPA型グルタミン酸受容体のGluA1サブユニットの細胞外ドメインには、6ヶ所のN型糖鎖修飾部位が存在し、2ヶ 所(N63, N363)の糖鎖修飾の障害でAMPA型グルタミン酸受容体の4量体形成と細胞表面への移送が障害され、早期に分解されることがわかった。またN401の部 分は、他のN型糖鎖修飾部位がほとんど脳内においてN型糖鎖修飾されているのに対し、不完全な糖鎖修飾を受けていることがわかった。この部位のN型糖鎖修飾が行われない場合、チャンネル機能としてイオン高透過性となる。さらにN401の糖鎖修飾の状態を観察するために、糖鎖修飾されないN401部位を特異的に認識する抗体を作成し解析したところ脳の発達に伴って糖鎖修飾の程度が変化することがわかった。さらに神経活動依存的にも糖鎖修飾の程度が変化し、これによって 神経シナプスにおいて糖鎖修飾されていないAMPA型グルタミン酸受容体の量的変化がおき、シナプス可塑性を制御していることがわかった。これらの結果にもとづき、N401部位が糖鎖修飾されていない遺伝子変異マウスを作成した。最終年度は、上記の結果の一部を論文として報告するために追加実験を行い学会発表、論文発表を行った。さらに作成した遺伝子変異マウスの電気生理学的解析と行動学的解析を中心に実験を行った。現在の継続中である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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