研究課題
脂質メディエーター、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)のGタンパク共役型受容体サブタイプの1つ、S1P2は、血管内皮、血管平滑筋、および単球/マクロファージ(MΦ)に発現し、血管恒常性維持(アナフィラキシーの抑止)、がん血管新生の抑制等、ホメオスタシスの維持に関わっている。本研究は、MΦに発現するS1P2の肺線維症における病態生理学的意義を明らかにする目的で、MΦ特異的にS1P2を欠損する遺伝子改変マウス(S1P2flox/flox ; LysM-Cre)を作出し、ブレオマイシン負荷モデルを用いて検討を行った。コントロールマウスとして同腹のS1P2flox/floxマウスを用いた。気管支肺胞洗浄液(BALF)と腹腔から得たMΦにおいてqPCRによりS1P受容体各サブタイプの発現を検討したところ、S1P2flox/flox ; LysM-Creマウスでは、S1P2 mRNA発現のみ95 %の低下を認め、S1P1およびS1P4 mRNAは低下していなかった。また、LysM-Cre;tdTomatoマウスの検討から、BALF中のtdTomato発現細胞は全てMac3が陽性、一方,Mac3陰性細胞はtdTomatoを発現していなかった。これらのことから,マクロファージ特異的にS1P2 mRNAの発現が抑制されていることを確認した。ブレオマイシン(0.035 mg/g)を週2回4週間腹腔内投与し、投与開始後33日目に解析した(ブレオマイシン非投与群は同量の生理食塩水を投与)。S1P2flox/flox ; LysM-Creマウスの肺組織線維化面積(平均値9.5%)はS1P2flox/floxマウス(5.5%)に比較して有意に増加していた。BALFの解析では、ブレオマイシンを投与した両群マウス間で総細胞数、各細胞の分画、可溶性コラーゲン濃度、総タンパク濃度に差を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
MΦ特異的にS1P2を欠損する遺伝子改変マウス(S1P2flox/flox ; LysM-Cre)を作出し、ブレオマイシン全身投与法で発症する肺線維症が同腹コントロール群に比べて有意に増悪することを見出した。
MΦ特異的S1P2欠損マウス(S1P2flox/flox ; LysM-Cre)におけるブレオマイシン誘発性肺線維症の増悪の分子機構を解析する。
技術的な問題で研究の進展が予想より遅延したため次年度使用額が発生した。問題が解決したので次年度に遅延分を取り戻すよう研究計画を遂行する。
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