研究課題
脂質メディエーター、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、生体膜の構成成分であるスフィンゴシンからスフィンゴシン・キナーゼ(SphK1およびSphK2)によるリン酸化により生成し、Gタンパク共役型受容体の5つのサブタイプ(S1P1~S1P5)を介して多彩な作用を発揮する。S1P2は血管内皮細胞・平滑筋細胞およびマクロファージに発現し、前2者のS1P2受容体はがん血管新生の抑制、血管壁バリア機能の維持等の重要な役割を担うことを報告してきた。本研究は、マクロファージの機能調節におけるスフィンゴ脂質シグナル伝達系の役割を肺線維症と粥状動脈硬化の2つの疾患モデルを用いて検討した。抗がん剤ブレオマイシンにより誘発される肺線維症は、S1P2遺伝子欠損マウスにおいて同腹野生型マウスと比較して顕著に軽減されること、マクロファージのS1P2受容体活性化により、主要な炎症惹起サイトカインであるインターロイキン(IL)-13の発現誘導が増強されることを見出した。実際、抗IL-13抗体、あるいは、CSF-1阻害薬によるマクロファージ減少によりブレオマイシン肺線維症が顕著に軽減された。第二に、ApoE欠損の遺伝的背景で高脂肪食負荷により発症する粥状動脈硬化は、SphK2欠損マウスにおいて同腹野生型マウスと比較して顕著に増悪した(SphK1欠損マウスは野生型と同程度であった)。SphK2欠損により、マクロファージが貪食した脂肪滴のオートファジー-リソソーム系による処理が障害され、細胞内コレステロール蓄積が増大することを見出した。SphK2欠損マウスをSphK1を全身に高発現するトランスジェニックマウス(SphK1Tg)と交配して得たSphK2KO/SphK1Tgマウスでは、粥状動脈硬化の増悪が部分的にレスキューされたことから、SphK2のこの機能はSphK1により部分的にのみ代替可能と考えられた。
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