研究課題/領域番号 |
17K08546
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 有作 自治医科大学, 医学部, 講師 (60528420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 摂食亢進 / 求心性迷走神経 / TRPA1 |
研究実績の概要 |
TRPA1アゴニストであるニンニク成分:ジアリルトリスルフィド(DATS)をマウスへ経口投与すると摂食量が亢進する。この摂食作用において求心性迷走神経の関与を検討するために、横隔膜下の求心性迷走神経を切断したマウスにおけるDATSの摂食亢進作用を検討した。対照群の擬手術マウスで観察されたDATS経口投与後の摂食亢進作用は、迷走神経切断マウスで完全に消失した。加えて、カプサイシンを皮下投与して感覚神経を障害させてたマウスにおいても、DATS経口投与後の摂食亢進作用は完全に消失した。以上の結果より、DATSは求心性迷走神経を介して摂食量を亢進さえていることが明らかとなった。 DATSの経口投与によって、求心性迷走神経が活性化されているか、神経活性化マーカーのpERK1/2を指標に、組織化学的に定量した。DATSの経口投与によって、求心性迷走神経(nodose ganglion)のpERK1/2陽性細胞数は有意に増加した。従って、DATSは求心性迷走神経を活性化していることが、組織化学的に示された。 求心性迷走神経にウイルスベクターや神経毒サポリンをマイクロインジェクションする実験では、臓器サイズの大きいラットを用いる。そこで、まず、ラットにおけるDATSの摂食亢進作用を検討した。Wistar ratへのDATS経口投与も、マウス(ICRマウス)と同様、摂食量を短期的に亢進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPA1アゴニストのジアリルトリスルフィド(DATS)の摂食亢進作用において、求心性迷走神経の関与を明らかにすることができた。一方、予定していた迷走神経特異的TRPA1欠損マウスの作成については、初年度は動物に入荷ができず、実験を進めることができなかった。その代わり、食欲不振モデルマウスとして、拘束ストレス、抗がん剤、高齢の食欲不振モデルマウスを確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
求心性迷走神経から延髄孤束核への神経伝達物質の同定を試みる。これまで結果より、DATSによって求心性迷走神経は活性化される(pERK1/2発現が亢進)。一方、その投射先の延髄孤束核は活性化されない(pERK1/2の発現は変化無し)。従って、求心性迷走神経から延髄孤束核へは抑制性神経伝達物質が放出されているのではないかと推察している。 (1)免疫組織学的手法(抗体染色またはin situ hybridization)にてGABA陽性ニューロンを検出し、DATSによってGABA陽性迷走神経が活性化されているのか検証する。(2)延髄孤束核にGABA受容体阻害剤を投与して、DATSによる摂食亢進作用を検証する。 加えて、食欲不振モデルマウスにTRPA1アゴニストが有効であるか、検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 計画していた実験(遺伝子改変動物の搬入及び繁殖)に遅れが生じたため。 (使用計画) 上記実験を実施予定。もしくは、TRPA1 shRNAのウイルスベクターを作成し、後天的に迷走神経のTRPA1をノックダウンする実験に変更する事も検討する。(遺伝子改変動物を新たに搬入し、繁殖する必要性がなくなる)
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