研究課題/領域番号 |
17K08550
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 聡 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (40530663)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ネクローシス / アポトーシス / マイクロRNA / 細胞死制御 / がん分子標的 / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、がん細胞のネクローシスとアポトーシスを制御するmiRNAを同定し、その腫瘍生物学的な役割を明らかにすることで、がんの治療標的として応用可能なmiRNAを見出すことを目的としている。これまでに、抗がん剤FUdR(5-fluoro-2'-deoxyuridine)を作用させるとネクローシスを起こす細胞(マウス乳がんFM3A細胞F28-7株)とその細胞の形質の異なる細胞でアポトーシスを起こす細胞(F28-7-A株)を用いた研究から、ネクローシスとアポトーシスの制御に関与する複数のmiRNA(microRNA)を見出している。平成30年度は以下の研究を実施した。 (1)細胞死のモデル細胞を用いた研究から既に見出しているネクローシスとアポトーシスの切替え制御遺伝子と細胞死制御性miRNAの関連性を調べて、細胞死切替え制御遺伝子の発現を制御するmiRNAを選抜した。また、それらmiRNAについて各種データベースを用いて制がん標的としての応用有無を調べた。 (2)これまでに見出している細胞死制御性miRNAについて、そのmiRNA mimicまたはinhibitorをヒト大腸がん細胞HCT116などの各種ヒトがん細胞株に導入した際の制がん効果を調べた。 (3)細胞死制御性miRNAと標的のmRNAとの結合を阻害する化合物を、miRNAと相互作用する各種化合物データベースを用いて調べた。 (4)研究(3)で検索の結果、見出した化合物について、in vitro miRNA/mRNA 結合評価系を用いて、miRNA/mRNA結合阻害能を調べた。 上記の研究から、がんの治療に応用可能な細胞死制御性miRNA候補を見出すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に当初予定していたネクローシスまたは、アポトーシス細胞に固有のエクソソームの探索と腫瘍モデルマウスを用いた細胞死制御性miRNAのmimicまたは、inhibitorの制がん効果の評価については実施出来なかったが、各種ヒトがん細胞株を用いた細胞死制御性miRNAの制がん効果を指標としたスクリーニングを行なった。また、miRNA/mRNA阻害化合物のデータベース検索を行うと共に、見出した化合物のin vitro miRNA/mRNA結合評価系を用いたmiRNA/mRNA結合阻害能の評価を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、以下の研究を実施し、細胞死制御性miRNAが制がん標的に成り得るのか検討する。 (1)細胞死モデル細胞を用いて、ネクローシスまたは、アポトーシス細胞から分泌、放出されるエクソソームの存在有無を調べる。本研究から、エクソソームと各細胞死の関連性を明らかにする。また、エクソソームに内包されているmiRNAについても明らかにする。 (2)これまでの研究から見出している細胞死制御性miRNAとその標的mRNAとの結合を阻害する化合物を、miRNAと相互作用する化合物データベースを用いて調べる。また、見出した化合物はin vitro miRNA/mRNA 結合評価系を用いてmiRNA/mRNA結合阻害能の評価を行う。 (3)各種ヒトがん細胞株を用いて、細胞死制御性miRNAのmimicまたはinhibitorの導入により、抗がん剤投与及び放射線照射による細胞死(ネクローシスまたはアポトーシス)切替え有無を調べる。また、がん細胞にmiRNA/mRNA結合阻害化合物、miRNA mimicまたはinhibitorを作用させ、がん細胞の増殖、老化、細胞死に与える影響を調べる。これらの研究から、制がん標的としての有効性を評価すると共に、細胞死制御性miRNAの腫瘍生物学的な役割を明らかにする。 (4)制がん標的として有望なmiRNAについては、腫瘍モデルマウスを用いて、制がんmiRNAのmimic、あるいはinhibitorを局所または、全身投与し、制がん効果を調べる。この時、同時に腫瘍内の壊死巣を採取してネクローシスとアポトーシスの割合を調べる。本研究から、見出したmiRNAの制がん標的としての有効性を評価する。
|