研究課題/領域番号 |
17K08554
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
沼田 かお理 (佐藤かお理) 福岡大学, 医学部, 特別研究員(RPD) (60614196)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アニオンチャネル / アシドーシス |
研究実績の概要 |
平成29年度は、細胞の移動における酸感受性外向整流性アニオンチャネル(acid-sensitive outwardly rectifying anion channel;ASOR)の関与を検討するため、HeLa細胞を用いて細胞移動測定実験を行った。pH 7.5の条件下に比べて、pH 5.5の条件下では細胞がより多く動いていたが、残念ながら現段階においてその影響がASORによるものでといえる結果を得ることが出来ていない。平成30年度のASORの分子実体の解明の研究計画を前倒しして、遺伝子サイレンシング法を用いた研究において、HeLa細胞を用いてノックアウト細胞の作成に着手した。こちらは、時間がかかるためまだ完成までには至っていないが、順調に進んでいる。 アニオンチャネルに関連して、ATP-Binding Cassette (ABC) トランスポータースーパーファミリーの1つであるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)タンパクが、一般に慢性便秘薬として処方されている潤腸湯(JCT)の投与により活性化することを、ヒト腸由来Caco-2細胞を用いた実験で明らかにした。更に、JCTは、細胞内のサイクリックAMPの上昇を引き起すことも明らかにした。これらの結果より、ヒトの腸内において、JCTが作用すると細胞内サイクリックAMPが上昇し、これがCFTRを活性化させ、腸内への水の分泌が促進されるために腸の蠕動運動による便の移動がスムーズになり、便秘が解消されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞移動測定法においては、当初の予想に反する結果が出てしまっているが、他に候補となる膜タンパク質が出てきており、今後の研究に大いに期待が出来るところまで進めることが出来た。また、遺伝サイレンシング法によるノックアウト細胞の作成においては、順調に進んでいる。以上の進捗状況を考慮すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から前倒しで行っているノックダウン細胞の作成を完成させると共に、当初の研究計画どおり、ASORの分子実体の解明に力を入れて取り組む。また、平成29年度で行う予定であった細胞移動実験において、アシドーシス条件下において細胞移動が激しくなる現象に関与しているものが何であるのか、引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年9月末に倒立顕微鏡が故障し、故障箇所の部品交換のため、そして、平成30年どの実験の前倒しにより予算の前倒し請求を行った。その後、年度末キャンペーンで実験に必要な試薬の金額がだいぶ安くなったため、次年度使用額が生じた。平成29年度の未使用額は、主に試薬の購入代として使用させていただきたい。
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