大腸菌にはMscSとMscLと呼ばれる機械受容(MS:mechanosensitive)チャネルが発現している。低張刺激に晒されて菌体が膨張すると閾値の低いMscSから順に開口して水やイオンなどを放出することで細胞の破裂死を防いでいる。しかし、MSチャネルの機械刺激に対する活性化機構についての詳細は謎である。本研究の目的は、機械刺激およびMSチャネルのactivator(活性化剤)であるクロルプロマジン(CPZ)に対し、どのようにMscLが活性化されるのか、その分子機構を解明することである。平成29年度は、電気生理学的手法であるパッチクランプ法を用いて、CPZの投与による野生型MscLの機械刺激および両親媒性物質に対するMscLの活性化機構の解明に向けた基礎的研究を行った。その結果、MscLはCPZの作用により、時間依存性、濃度依存性および圧力依存性を示した。今後は、突然変異型MscLの作成、細胞膜発現の確認およびin vivoでの機械刺激感受性の評価を行う予定である。
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