研究課題
本研究は、プリン受容体であるP2Y1Rの作用薬に対する感受性が、膜電位が過分極時よりも脱分極時の時に高いという自身の研究結果をもとに、P2Y1Rの膜電位依存性を生じる機構の解明目的として計画されたものである。この目的の下、非天然蛍光アミノ酸(ANAP)を特定のアミノ酸残基に導入したP2Y1Rを用い、膜電位の変化に対応した蛍光変化計測から、膜電位依存性に関わる重要なアミノ酸残基や領域の検出を目指した。本研究では、予算の関係から当初予定していたアフリカツメガエル卵母細胞ではなく培養細胞に受容体を発現させ、膜電位固定下での蛍光強度計測を試みた。蛍光変化を示すことが報告されている膜電位依存性ホスファターゼのANAP変異体を用い、照明系や検出感度などの条件検討を行ったが、膜電位変化による有意な蛍光強度変化の測定に至らなかった。一方、ANAPを導入したP2Y1Rの機能解析を行ったが受容体として機能することに確認したこともあり、これらのコンストラクトが大きな蛍光変化を示すことを期待して膜電位固定化における蛍光強度計測を行ったが、作用薬の有無にかかわらず、有意な変化の検出には至らなかった。膜電位依存性チャネルにおいて膜電位変化に伴うゲーティングチャージの移動をゲーティング電流として捉えることが出来る。実際、培養細胞系でカリウムチャネルや電位依存性ホスファターゼのゲーティング電流を記録した。しかしながら、同様な条件でもP2Y1Rやムスカリン性受容体のゲーティング電流を記録することが出来ず、ゲーティングチャージの移動が未詳なものであることが明らかとなった。一方、一部の受容体における膜電位依存性は作用薬の種類により異なるという報告のあることから、マウスP2Y1Rの作用薬であるATPや2MeSADPについて実験を行った。その結果、ATPは電位依存性を示すことが明らかとなった。
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