研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュをモデルとした生体蛍光イメージング技術を用いることで、血流によるメカニカルストレスが、血管新生や血管のリモデリングをどのような機構で制御しているのかを明らかにすることを目指している。そのために、1年目では最初に、ゼブラフィッシュの様々な発生時期・発生部位で血管形成過程を観察し、血流依存的な血管新生・血管リモデリング過程が再現的に観察される部位の同定を試みた。ゼブラフィッシュ胚は、心拍および血流が停止している状態でも、外から酸素を取り込むことで長時間生存できるという特徴を持っている。この特徴を生かして、発生途中で薬剤処理により心拍を停止させ、血流を止めた際の影響を網羅的に解析した。その結果、体幹の血管は血流停止の影響をあまり受けないのに対し、頭部の血管形成過程において血流依存的な血管新生およびリモデリングが起こる部位をそれぞれ同定した。ここで見られた血流依存的な血管新生は、VEGF受容体の阻害剤によって抑制されたことから、同過程がVEGF受容体の活性に依存することが明らかになった。以前我々は、細胞内カルシウムの上昇が、血管新生過程でのVEGFR2活性化の間接的な指標となることを見出している。そこで、GCaMP7aを内皮細胞特異的に発現させるトランスジェニックゼブラフィッシュをライトシート顕微鏡で観察することで、血流依存的な血管新生過程におけるカルシウムイメージングを行った。その結果、血流依存的な血管新生部位でカルシウム量のオシレーションが起こることが分かった。このカルシウム応答は、血流を停止させると起きなくなったことから、血管新生部位における内皮細胞が実際に血流に応答していることを突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、血流停止胚の網羅的観察を行うことにより、血流依存的に起こる血管新生部位やリモデリング部位を同定し、その過程を生体イメージングにより詳細に観察することに成功した。こさらに、生体カルシウムイメージングを行うことにより、血管新生部位の血管内皮細胞において血流依存性のカルシウム応答が起こることを明らかにしている。
本研究において新たに同定された血流依存性の血管新生過程が、これまでよく解析されている血流非依存性の血管新生過程と比べて形態的にどのような特徴を持つのかを、超解像イメージングにより解析する。そのために、細胞内極性や細胞間接着、細胞骨格分子を血管内皮細胞特異的に観察できるトランスジェニックゼブラフィッシュを既に樹立している。さらに、検出されたカルシウムのオシレーションがVEGFR2の活性化を反映しているのかどうかを検討し、VEGFR2の活性化がいつ、どの細胞で起きているのかを生きたままモニターする系の確立を行う。これらのイメージング解析を行うことで、同過程がどのようなシグナル伝達分子や力学制御分子によって制御されているのかを明らかにしていく。
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