研究課題/領域番号 |
17K08561
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
榎木 亮介 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (00528341)
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研究分担者 |
織田 善晃 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (20735542)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 概日リズム / 視交叉上核 / イメージング / 神経ネットワーク / カルシウム / 光同調 / 生体内計測 |
研究実績の概要 |
哺乳類の概日リズムの中枢は脳の視床下部にある視交叉上核に存在し、網膜より直接の神経投射を受け、外界の光環境情報を統合し、最終的に睡眠/覚醒などの24時間の生理機能を制御する。概日リズム中枢は、自律振動と光同調の機能を持つ事が必須条件である。これ迄の申請者の光計測により、細胞内カルシウムや膜電位の概日リズムを可視化することで、神経回路レベルでの概日リズムの自律振動の仕組みを解明してきた。さらに本年度は、視交叉上核の主な出力投射先である室傍核と傍室傍核領域に細胞内カルシウムのウルトラディアンリズムを報告した。このように概日リズムおよびウルトラディアンの自律振動メカニズムが明らかになってきた一方で、生理機能を外界環境に同調させる光同調の仕組みの多くは未だ不明である。本研究課題では特に、光計測により神経活動や概日リズム変動を捉えつつ、視交叉上核の神経回路に摂動を与え、光同調の仕組みを解明することを目的に研究を行っている。 本年度は特に、マウス生体内の脳深部からの光計測と細胞機能の操作を行うための要素技術の確立を目指して基礎的な条件検討を行った。まず成獣マウスの脳深部に遺伝子コード型カルシウムセンサーを組み込んだアデノ随伴ウイルスを感染・発現させる最適な方法(尾静脈注射と頭蓋内注射)を検討した。次にマウスの頭部に装着可能な小型LED、CMOSセンサー、GRINレンズなどからなる小型顕微鏡を作成して動作の確認を行った。また防音/遮光/換気の機能が備わった簡易型アイソレーションキャビネットを設計し、赤外線センサーによるマウス自発行動の自動測定システムを構築して動作確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに、培養スライスでの実験系において細胞種特異的に蛍光センサーおよび光遺伝学ツールを発現させ、光により細胞機能の計測/操作が可能な実験系を構築した。さらに本年度は、マウス成獣の生体内からの計測と制御を行うための基盤技術の確立を目指して実験条件の最適化を行った。構築した小型顕微鏡は正常に作動したものの、数日~週に渡る長期計測を行うためには顕微鏡本体の耐久性や安定性の大幅な向上と、測定プログラムの改良が必要である。また脳深部の目的領域のみにアデノ随伴ウイルスを感染させる必要があるが、成功率が未だ低いために更なる実験技術の向上が必要である。生体内計測と細胞操作の研究は海外の有力ラボも精力的に進めていることから、戦略的に研究を進めて行く必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro、in vivoの実験条件をさらに最適化して、長期間の実験が可能な実験系の耐久性/安定性の向上を目指す。さらに本研究提案を基盤とした海外ラボとの共同研究提案(国際共同研究強化(A))とも連携して研究を戦略的に進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費節約により未使用額が生じた。研究を加速する為の動物購入経費、飼育経費、論文出版に関する費用に支出する。
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