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2018 年度 実施状況報告書

微小磁場環境下における細胞酸化ストレス抑制と細胞骨格縮小のメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K08563
研究機関東北大学

研究代表者

宮田 英威  東北大学, 理学研究科, 准教授 (90229865)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード微弱磁場 / 地磁気 / マクロファージ / スーパーオキシドアニオン
研究実績の概要

昨年度の研究で、微弱磁場環境下に置かれた株化マクロファージRAW264におけるミトコンドリア膜電位が通常の地磁気環境下に置かれた場合に比べて低下することを明らかにした。地磁気環境下でミトコンドリア膜電位はミトコンドリア内膜を挟んだプロトン濃度差により生じるが、濃度差形成に伴う副産物として、酸化ストレス源であるスーパーオキシドアニオン(O2-)がミトコンドリア内に生成する。マクロファージは通常の培養条件下では地磁気環境中にあるが、その際にも一定レベルのO2-が生じている。このことから、微弱磁場に曝露されたマクロファージ中ではミトコンドリア膜電位形成の副産物であるO2-の産生も低下することが予想される。そこで地磁気環境と微弱磁場環境におけるマクロファージのO2-産生を比較した。
地磁気環境と微弱磁場環境を実現するため、細胞培養用の炭酸ガスインキュベーターを磁場シールドケースに収めた。この状態ではインキュベーター内部の磁場は数マイクロテスラまで低下する。インキュベーター内には2台のメリットコイルを設置し、一方のコイルを形成する2本の電線に同方向にDC電流を流し、鉛直下向きに直流磁場を発生させ地磁気の代わりとした。もう一方のコイル(微弱磁場用)には2本の電線に逆向きに同じ大きさのDC電流を流して磁場をキャンセルさせ、ジュール熱だけが磁場発生用コイルと等しくなるようにした。この状態でコイル内にマクロファージを培養したシャーレを置き、24時間、摂氏37度で培養した。その後マクロファージ中のO2-を指示薬ニトロTBを用いて測定した。3回の独立な実験を行った結果、地磁気環境に置かれた細胞と微弱磁場環境に置かれた細胞の間でO2-産生量に差はなかった。従って最初に予想した、微弱磁場中でマクロファージのO2-産生が低下するという予想は支持されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究実績概要に述べたように、我々が昨年度得た結果から導いた作業仮説「微弱磁場環境下においてマクロファージのミトコンドリアO2-産生は低下する」に基づいて、一細胞あたりのO2-(O2-指示薬発色量を発色にかかわる全細胞数で除した値)を見積もった。しかし上述のように、微弱磁場中でO2-産生低下は見られなかった。従って、予想された低下が測定データのばらつきに隠蔽されてしまったという可能性が完全には否定できていない。すなわち一細胞あたりのO2-産生量を求めるためには上述のようにO2-の指示薬発色量と測定されている全細胞数が必要である。データの相対変動係数(測定の標準偏差を平均値で除した量)を、発色量の測定値から得られるものと細胞数測定値から得られるものの間で比較すると前者が大きい、つまりよりばらついている。このばらつきが一細胞あたりのO2-産生量のばらつきとなって現れ、予想された差が隠蔽されてしまった可能性が完全には否定されていない。細胞を用いた実験ではデータのばらつきが大きくなる傾向があり、本研究でも当初からそれを予想して独立な実験を繰り返し、また実験手順を一つ一つ見直して誤差の原因を除去する努力を行った。これらが研究進捗が当初予定より遅れる原因となった。しかし、ミトコンドリアで産生されたO2-がそののち代謝されることによる減少などに起因するばらつきは考慮しておらず、解決すべき課題として浮かび上がってきている。

今後の研究の推進方策

今後は作業仮説の当否を確定するため、O2-産生量を測定する際の測定値のばらつきを小さくすることに注力する。すなわち、(1)O2-産生測定の指示薬をMitoSox Red(ミトコンドリア内に取り込まれてO2-と反応して蛍光性となる性質を持つ)に切り替える。そのメリットはO2-が発生する場所で測定するということであり、産生されたO2-が細胞内で代謝にされて消失してしまう前に捕まえるということである;代謝による消失も確率的に起こると考えられ、測定という点から見れば誤差の原因となるのでこの点の改善が見込める。(2)細胞数についても細胞核を染色する蛍光色素HOECHST33258を用いた測定を行って見積もる。この方法では測定対象となる細胞数は、直接計数法(一定体積内の細胞数をカウンターで計数する)が対象とする細胞数(オーダー100)よりもはるかに多数(オーダー10000)であるため誤差は10分の一程度となることが期待される。これらを組み合わせてO2-産生に対する微弱磁場影響の有無を再検討し、作業仮説の評価確定を目指す。

次年度使用額が生じた理由

実験結果が最初の予想通りであれば、今年度の実験において蛍光物質を用いた実験まで進む予定であったが、計画の遅れのため、次年度にせざるを得ない状況となった。蛍光物質は他の試薬類に比べて高価であるため、それを購入しなかった結果当初見込んでいた少ない使用額となった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 生物の磁場感受性と電磁過敏症2019

    • 著者名/発表者名
      宮田英威
    • 雑誌名

      室内環境 印刷中

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] 微弱磁場が細胞に与える影響の研究2018

    • 著者名/発表者名
      宮田英威、二ピポン スリマイ
    • 学会等名
      第27回日本臨床環境医学会学術集会
  • [図書] Physical principles of biomembranes and cells2018

    • 著者名/発表者名
      Kazuo Ohki, Hidetake Miyata
    • 総ページ数
      170
    • 出版者
      Springer Japan, KK

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公開日: 2019-12-27  

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