研究課題/領域番号 |
17K08568
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 佳子 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (60548543)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発熱 / 摂食 / 代謝 |
研究実績の概要 |
感染が起こると食欲低下につながることがあるが、その意義やメカニズムは不明である。本研究では、特に感染が起こる際に見られる発熱と摂食抑制の関係に着目して解析を行っている。感染が起こると免疫系の刺激によって脳内で発熱メディエーターであるプロスタグランジンE2が産生される。産生されたプロスタグランジンE2は、視床下部の最吻側に位置する視索前野のニューロン群に発現する受容体サブタイプ、EP3に作用し、それが引き金となって発熱が起こる。このように、視索前野に存在するEP3発現ニューロンは、発熱の重要な鍵であるにも関わらず、EP3発現ニューロンの性質や神経活動の細胞生理学的特性などについて、不明な部分が多い。研究代表者のこれまでの電気生理学的な解析から、視索前野のEP3発現ニューロンの性質は多様であることがわかってきた。さらに、このニューロンの特性を知るために、免疫組織学、及びin situ hybridization などの方法を用いて、このニューロン群の組織化学的特徴の多様性を検討した。現在これらの解析を継続して実施しており、さらに詳細に解析を進めている。また、感染時の摂食抑制について解析する上で、摂食と代謝のメカニズムについてもこれまで解析してきた。その中で、いくつかの脳領域が感染時の摂食抑制に関与しているのではないかと考えられたため、現在、その神経投射や生理学的特性を免疫組織化学的、電気生理学的に解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染に伴う食欲不振を研究する上で、感染時に起こる発熱反応の入り口となる視索前野のEP3発現ニューロンの特性を知る必要がある。そのために、感染が起こると脳内で産生されるプロスタグランジンE2を投与し、視索前野EP3発現ニューロンの神経活動を電気生理学的に測定している。これらの進捗は当初の予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
感染症状の発現メカニズムにおいて、視索前野のEP3発現ニューロンがどのような機能的役割を担うのかを検証するために、プロスタグランジンE2などを視索前野へ投与して、どのような神経伝達物質を持つEP3発現ニューロンが活性化するのかを、活性化ニューロンのマーカーであるc-fosの発現などを指標として検討する。また、視索前野のEP3発現ニューロンを温度感受性や、プロスタグランジンE2の反応性などを指標にして、細胞生理学的に分類する。さらに、視索前野のEP3発現ニューロンがどの脳領域のどの神経細胞に投射しているのかを調べるために、視索前野のEP3発現ニューロン特異的に、軸索終末まで運ばれるGFPを発現させ、免疫組織化学やin situ hybridizationの技術を用いて詳細に調べる。特に、摂食に関連する領域への神経投射や、その軸索終末に含まれる神経伝達物質についても組織学的手法を用いて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加する予定であった学会をいくつかキャンセルし、また、消耗品購入の予定が納品遅れなどの理由のためにずれたため、差額が生じた。この残額については、次年度以降、研究成果を国際学会や国内学会にて積極的に発表し、また、研究交流を行う予定であり、こうした研究活動を通じて有効に残額を使用する予定である。
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