私たちの研究グループは、概日時計とNAD+代謝制御に注目し、分子レベルでの老化進行のメカニズム解明を目指している。本研究課題では、概日時計およびNAD+代謝と細胞老化進行の関係性を明らかにすることを研究目的としている。 平成29年度に細胞内NAD+濃度が恒常的に上昇しているNampt高発現マウス胚由来初代線維芽細胞 (Tg-MEF細胞) で複製老化開始が遅延することを報告した。今年度、Tg-MEF細胞は、複製老化だけでなくストレス誘導性老化も抑制することを国際誌に報告した。また近年、個体老化の原因として老化細胞蓄積が注目されており、平成29年度および本年度の私たちの報告は、Namptを生体内で活性化させることで生体内老化細胞蓄積を抑制できる可能性を示している。これらの点についての総説も今年度国際誌に報告することができた。 平成30年度、複製老化にともない概日時計の特性が変化することを報告したが、この報告では概日時計特性が先に変化するのか、それとも複製老化により概日時計特性が変化するのか、さらにはこれら2つの現象に関連性がないのかは不明のままであった。この疑問を明らかにすべく研究を行った結果、老化誘導により概日時計特性が変化することを明らかにした。この結果についても本年度国際誌に報告することができた。さらに、これら2報による概日時計と細胞老化の関連性に関する総説も現在執筆中である。さらに、細胞老化による概日時計特性変化にNAD+減少、それに続くNAD+依存性酵素SIRT1の活性低下が関わっている可能性を見出し、国際誌に報告することができた。
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