研究課題/領域番号 |
17K08573
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高柳 友紀 自治医科大学, 医学部, 講師 (10418890)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オキシトシン / 思春期 / 社会行動 / 遊び |
研究実績の概要 |
思春期の社会的遊びは社会性の発達に重要である。しかし、この神経基盤は明らかではない。これまでに我々は、ラットの遊び行動時にオキシトシン産生ニューロンが活性化されること、遊びを阻害すると成体で社会的相互作用が阻害されることを示している。本研究の目的は、「思春期に遊びが阻害されると、オキシトシン神経回路が可塑的に変化して、成体で社会行動の障害が起こる」という仮説を検証することである。 神経活動マーカーであるc-Fosの発現を詳細に検討することで、遊び行動時のラットでは視床下部尾側部のオキシトシン産生ニューロンが特異的に活性化されることを見出した。さらに、オキシトシン産生ニューロンの投射先を探るために、オキシトシン遺伝子プロモーター制御下でDNA組換え酵素Flippaseを発現するトランスジェニックラットの作製を行った。この動物は所属研究室で作製し、現在ライン選定の段階にある。 また、遊び行動時に活性化されるオキシトシン産生ニューロンの役割解析のために、オキシトシンプロモーター制御下でヒト改変ジフテリア毒素受容体を発現するトランスジェニックラットを用いることを計画した。この動物に対して乳児期にジフテリア毒素を投与して、オキシトシン産生ニューロンを特異的に破壊する系の検討を行っている。 さらに、遊び行動を阻害したラットの成体における社会行動について、社会的相互作用が阻害されるだけでなく、快情動に伴う50kHz帯域の発声に対する選好が障害されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遊び行動時に活性化されるオキシトシン産生ニューロンを同定し、この投射先を同定するために遺伝子改変ラットの作製を行った。また、遊び行動時に活性化されるオキシトシン産生ニューロンの役割解析のため、遺伝子改変ラットを用いて幼少期にオキシトシン産生ニューロンを特異的に破壊する系の確立を進めている。さらに、遊び行動を阻害した時の成体における新たな社会行動障害を見出した。これらは当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在作製中の遺伝子改変ラットとアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、遊び行動時に活性化されるオキシトシン神経回路を同定する。さらに、人工受容体を用いて、同定したオキシトシン神経回路の活動を調節し、その効果を検証する。 遺伝子改変ラットを用いて幼少期にオキシトシン産生ニューロンを破壊し、幼少期の遊び行動と成体における社会行動が障害されるかを検証する。また、オキシトシン受容体アンタゴニストを用いて同様の検証を行う。 思春期に遊び行動を阻害されたラットにおいて、c-Fosの発現、ニューロン数、mRNA発現量を指標にして、成体でオキシトシン神経回路が抑制されるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、本研究の基礎となる組織化学的解析、行動解析、遺伝子改変動物の作製が中心であり、実験動物・消耗品の購入費用が少なかったため、次年度使用額が生じた。平成30年度は、遺伝子組み換えラットを多数用いた実験、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた実験を計画している。さらに、免疫染色も多く行う必要がある。平成30年度は、これらの実験のために必要な消耗品費や実験動物費として、使用することを計画している。
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