ATF5欠損マウスは多動などの異常行動を示した。特にホームケージではない新規の環境において、多動や不安様行動が上昇していることがわかった。ATF5欠損マウスの異常行動の原因を調べるために、脳内神経伝達物質であるモノアミンの量を解析したところ、扁桃体などでドーパミンなどの量が減少していることがわ かった。本研究では、多動などの異常行動の原因を解明するために、ATF5欠損マウスを用いて脳内異常の原因を明らかにすることを目的とした。 ATF5欠損マウスでは、Open field testやdark/light transition testなどで、不安様行動が亢進していることがわかった。一方、扁桃体ではドーパミンが D1ドーパミン受容体(D1DR)とD2ドーパミン受容体(D2DR)と結合し、不安様行動を調節することが報告されている。このことから、ATF5欠損マウスにおいて、D1DRとD2DRの発現レベルを解析した。D1DRは線条体や大脳皮質に多く局在しており、D2DRは線条体、扁桃体、大脳皮質に発現していた。しかし、ATF5欠損マウスの扁桃体において、D2DR陽性ニューロンの数が野生型マウスに比べて減少していることがわかった。このことから、ATF5の欠損はドーパミンシグナルに影響を与えて、不安様行動を調節する可能性があることが予想された。 ATF5が関与する異常行動を生み出すメカニズムを解明するために、ATF5欠損マウス脳におけるRNAシークエンス解析を行なった。ATF5欠損マウス脳において、ストレス応答関連、神経細胞の骨格形成、エピジェネティックな遺伝子発現制御に関与する遺伝子の発現に増減が見られた。これらの候補遺伝子をReal Time PCRを用いて、発現レベルの解析を行ったところ、ATF5欠損マウスにおいて、これらの遺伝子の発現に異常があることが確認できた。
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