研究課題/領域番号 |
17K08577
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
舩橋 利也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70229102)
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研究分担者 |
長谷 都 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20450611)
萩原 裕子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90468207)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 雄性化 / テストステロン / 雌性 / 餌の形状 / パッチクランプ / LTP / 海馬 / スライス |
研究実績の概要 |
餌の形状が性特異的に海馬の担う高次機能に影響することを調べるために、出生直後にテストステロンプロピオネート(TP, 100 μg)を処置して雌性ラットを雄性化した。離乳直後から、対照群としては通常の餌で飼育し、実験群は柔らかい餌で飼育した。7-8週の成熟に達してから実験に用いた。ラットは思春期に膣開口せず、雄性化していることが示唆された。全ての動物は受動的回避学習をしてから用いた。受動的回避学習として、暗い部屋に移動した時にドアを閉めて床のグリッドから電気ショック(0.8 mA、2 秒) を与えた。30分後に再び明るい部屋に入れ、暗い部屋に移動するまでの時間を計測した。その30分後に以下の実験を行った。①Y迷路実験は3つの通路からなり、一つの選択肢にラットを置き、自由に通路を探索させ、5 分間の自発的交替行動(spontaneous alternation)を算出た。その結果、有意ではないが、柔らかい餌で飼育した群は、alternationが高い、すなわち、海馬高次機能が良い傾向を示した。②Rectification index(RI)の測定は、スライス切片をホールセルモードのパッチクランプ膜電位固定法を用いた。シェーファー線維を刺激し、記録は海馬CA1から行った。膜電位-60 mVにした時のEPSCを+40 mVのEPSCで割った値、RIは、柔らかい餌で飼育した群が高い傾向を示したが有意ではなかった。③Long-term Potentiation(LTP)実験は膜電位を-60 mVに固定して、テタヌス刺激はpaired刺激で、0 mVの脱分極刺激と、3 Hz 90 秒間の電気刺激を同時に行った。その結果、通常の餌で飼育したラットはLTPが誘導される傾向を示した。以上より、雌性ラットを雄性化すると海馬高次機能が上昇し餌の形状も海馬の機能に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の順番を来年度と今年度を入れ替えたが、それにより、雌性を雄性化すると海馬機能が上昇し、また、餌の形状が雄性も影響を与えている可能性さ示唆され、新知見が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
餌の形状の海馬高次機能に対する影響が、脳の性分化の影響を受けるのか受けないのか、明確にする実験が必要となり、つまり、可能性として、雄性でも餌の形状が海馬高次機能に影響を及ぼす可能性があり、また、行動上の変化と電気生理学的なデータが若干乖離してる可能性もある。これまで、餌の形状は雄性ラットの行動を調節する海馬高次機能に影響を及ぼさないと考えていたが、基礎データとして雄の海馬の餌の形状が与える影響を電気生理学的に解析することが必要と思われる。また、雌性ラットを雄性化した場合も、もう少しnを足す必要性が感じられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は顕微鏡の光源が故障し、本実験においては必須となるので共同購入したが消耗品代を節約に努めたため、次年度使用額、すなわち、若干の余剰金が生じた。新年度は、最終年度となり、ステロイドのアゴニストなど高額な薬品代も多く、動物などの購入代とあいまって、問題なく消費されると考えている。また、パッチクランプ用の薬品代に充てるつもりである。
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