研究課題/領域番号 |
17K08581
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
今岡 進 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60145795)
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研究分担者 |
大黒 亜美 関西学院大学, 理工学部, 助教 (20634497)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / Nrf2 / Siah2 / 寿命 |
研究実績の概要 |
1.Siahの特異抗体作成と発現制御機構解明 ヒトSiah2 cDNAを単離して大腸菌で発現した。発現量は十分であったが、可溶化が出来なかった。そこで、可溶化後の大腸菌の沈査を調べたところ、かなり純度が高かったのでそれを用いてウサギでポリクローナル抗体を作成した。この抗体は細胞で過剰発現したSiah2については特異的に反応したが抗体価が低く、元々存在しているレベルのSiah2の検出はできなかった。先行研究で、Siah2がNrf2の発現を制御していることを明らかにしている。オートファジー関連因子であるp62はNrf2の制御因子であるKeap1と結合することで、Nrf2の量を増加させることが明らかになっているが、本抗体を用いてp62がSiah2を安定化していることが明らかにできた。 2.Nrf2発現制御化合物としてのビスフェノール類及びクロロゲン酸の作用機構の解明 先行研究においてビスフェノールA(BPA),クロロゲン酸(CGA)はヒト培養細胞において、ともにNrf2を増加させることを明らかにしている。今年度はまずBPAがNrf2を増加させる機構について検討した。その結果BPAは細胞中のCa2+濃度を増加させることで、一酸化窒素合成酵素(NOS)を活性化して、発生したNOがKeap1を不活化してNrf2が上昇することが明らかとなった。一方CGAはNOを上昇させず、BPAとは異なる機構であることが予想された。 3.酸化ストレスが線虫の寿命に与える影響の検討 一般的に酸化ストレスは老化の促進や寿命の低下を招くとされる。線虫においてSKN-1(ヒトNrf2の相同因子)の欠損は線虫の寿命を短縮した。BPAとCGAはヒトの細胞においてNrf2を誘導したが、線虫においてはCGAが寿命延長したのに対して、BPAは寿命短縮した。現在様々な遺伝子変異体を用いて、この機構について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通り進行したが、以下の2点について若干予定通り進まなかった。 大腸菌で発現したヒトSiah2の可溶化がうまくいかず、Siah2特異抗体は作成できたものの、抗体価が低く、低い発現量の細胞では検出できなかった。線虫のSiahは可溶化できそうであり、現在可溶化を検討中である。ヒトSiah2とかなり相同性があるので、うまく抗体ができれば、使用できる可能性が高い。 一方、線虫の遺伝子変異体を用いた、酸化ストレスが寿命に与える影響の検討であるが、申請者らにとっては初めての経験であり、連携研究者であり専門家の西脇教授に様々な助言をもらいながら進めているが、思いのほか時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
1.Siahの特異抗体作成と発現制御機構解明 引き続き、大腸菌で発現した線虫Siahの可溶化の検討さらには抗体作成を行う。ヒトSiah2はリン酸化及び自己ユビキチン化によって分解され通常の発現量は極めて低いとされるが確認はされていない。昨年度明らかにしたp62によるSiah2の安定化も含めて、Siah2発現メカニズムを解明していく。 2.Nrf2発現制御化合物としてのビスフェノール類及びクロロゲン酸の作用機構の解明 昨年度の研究によって、BPAは細胞中のCa2+濃度を増加させることで、Nrf2が上昇することが明らかとなった。そこで、今後BPAは細胞中のCa2+濃度を増加させる機構について検討する。まずCa2+濃度増加が細胞外からのCa2+の流入なのか、小胞体からの流出なのかを解明する。当初BPAがTRPチャンネルを刺激してCa2+の流入を促進していると考えたが、現在ではTRPチャンネル阻害剤が効かないことから、さらなる検討が必要と考え、検討を継続する。CGAについては少なくともBPAと異なる機構でNrf2を誘導していると考えられる。p62の増加がNrf2を増加させることが明らかになっているのでp62の発現量の変化及びリン酸化についての検討を行う。 3.酸化ストレスが線虫の寿命に与える影響の検討 SKN-1量の変化が線虫の寿命に影響を与えることは明らかにされている。昨年の研究でヒト培養細胞においてBPA,CGAともにNrf2 (SKN-1相同体)を誘導するが、線虫の寿命はCGAが延長し、BPAが短縮した。この原因を解明するためこれまで線虫の寿命に関わるとされる遺伝子であるサーチュイン(SIR), Daf-16の欠損体を用いてBPA,CGAの寿命に対する効果を明らかにする。一方でこの時のSKN-1, Siahの蛋白量を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な試薬類を購入し、300円未満の端数が生じた。これは次年度に必要な試薬類の購入に充てる。
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