研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、多彩な生理活性を有するペプチドである。我々はAMノックアウトマウス(AM-/-)と、AM受容体活性調節タンパクRAMP2のノックアウトマウス(RAMP2-/-)が、共に血管の発生異常により致死となることから、AM-RAMP2系が、血管新生にも必須であることを報告してきた。一方、AMは、様々な癌においても産生される。本研究では、腫瘍の増殖と転移におけるAM-RAMP2系の意義の検討を行った。昨年度までの研究において、誘導型の血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス (DI-E-RAMP2-/-)では、腫瘍転移が亢進することが示された。本年度はRAMP2欠損誘導後に生じる原発巣の変化について検討を行った。DI-E-RAMP2-/-では、腫瘍内血管のCD31陽性細胞が減少し、対照的にαSMA陽性細胞が増加していたことから、内皮間葉系転換(EndMT)が生じていると推測した。そこで、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対しTGF-βを添加し、EndMTの誘導実験を行なった。その結果、HUVECに対し予めAMを投与しておくことで、EndMT様変化が抑制され、VE-カドヘリンの発現と細胞膜直下のアクチン重合が亢進し、細胞間接着が強固になることが確認された。次にDI-E-RAMP2-/-の肺血管内皮細胞の初代培養を行い、TGF-β添加によるEndMT誘導実験を行なった。その結果、DI-E-RAMP2-/-の内皮細胞では、間葉系マーカーであるFSP-1陽性細胞が、野生型マウスと比較して有意に増加する一方、VE-カドヘリンの発現が低下していることが確認された。以上の結果から、DI-E-RAMP2-/-原発巣の血管では、EndMTによる血管構造の不安定化、透過性亢進が生じ、これにより腫瘍細胞の血管内浸潤が亢進することが考えられた。
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