癌幹細胞は種々のがん発生の原因であるとともに、その自己複製能・多分化能から遠隔転移・晩期再発の大きな原因の1つと考えられており、これを標的とすることにより持続的な治癒状態の達成が期待されている。しかし癌幹細胞は腫瘍組織内における存在数が少ない上に、エンドサイトーシス・トランスポーターなど細胞内からの薬物排出機構が活性化しているため抗がん剤耐性が非常に高く、有効な治療法が存在していないのが現状である。本研究ではこれまで開発してきたエンドサイトーシスを惹起しない脂質膜融合性コイルドコイル型ペプチドを用いて、癌幹細胞への選択的ドラッグデリバリー技術の構築を目的とした。 本年度は昨年度に引き続き、がん細胞移植マウスを用いた抗がん剤投与試験を行った。BALB/cヌードマウスの皮下にPC-3M-Pro4細胞を移植し、1週間後腫瘍形成が確認できた個体に対し、尾静脈よりCD44BP-K4とCy5-CCNB1 siRNAを含むCPEリポプレックス、CCNB1-リポプレックス(CPEなし)、Cy5-CCNB1 siRNA単体を週3回、3週間投与した。当初の予想と異なり、CPE-リポプレックスと単なるリポプレックスは両方とも腫瘍サイズを縮小し、両者の間で差が認められなかった。ゼブラフィッシュの場合と異なり、マウスではEPR (Enhanced Permeability and Retention) effectがsiRNA送達に効果的に作用していると考えられた。
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