研究実績の概要 |
マクロファージの活性化による慢性的な炎症刺激は、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患のみならず、がんや動脈硬化、肥満などの様々な疾患の発症や増悪に関与し、これら慢性難治性疾患の治療標的として期待が大きい。我々は疾患モデルやヒト検体を用いた検討から、EP4受容体結合蛋白として見いだされたEPRAPが、マクロファージの炎症性活性化を抑制し、慢性炎症の病態生理に極めて重要であること、さらにPP2AによるEPRAPの脱リン酸化が抗炎症作用発現に重要で、その指標となることを見いだした (Nakatsuji M, et al. PLoS Genet. 2015; Higuchi S, et al. J Immunol. 2016)。本研究は慢性炎症制御による新規医療の開発を目指し、EPRAPおよびその関連分子を標的とした、創薬および診断法の開発に関する探索的研究を行うものである。 平成29年度は、EPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの検討をさらに進めるため、蛍光蛋白で標識した野生型及び一連の変異型リコンビナントEPRAP発現プラスミドの作成に取り組んだ。リン酸化EPRAP特異抗体作成も同様に進めている。一方、脳内炎症モデルを用いた検討から、EPRAP遺伝子欠損による炎症抑制が認められ、脳内免疫担当細胞であるミクログリアに対してEPRAPは催炎症性に働くことを我々は以前明らかにしたが (Fujikawa R, et al. Am J Pathol. 2016)、平成29年度は、さらに、アルツハイマー病モデルを用いた検討から、EPRAP遺伝子欠損による脳内炎症抑制が、アルツハイマー病の周辺症状である不安を改善することを明らかにした (Fujikawa R, et al. Am J Pathol. 2017)。
|