研究課題
反復社会挫折ストレスは脳内でプロスタグランジンE2(PGE2)産生を増加する。ストレスによるPGE2の産生の増加における脳領域特異性の有無を検討するため、脳を皮質および海馬を含む皮質領域と皮質下領域に分けて解析した。反復ストレスは皮質下領域でPGE2産生を増加したが、皮質領域でPGE2は増加しなかった。反復ストレスによる社会忌避行動の誘導にはシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)が必須であることから、COX-1欠損マウスを反復社会挫折ストレスに供したところ、反復ストレスによる皮質下領域でのPGE2産生の増加は消失した。脳内ではCOX-1はミクログリア選択的に発現することから反復ストレスはミクログリアでPGE2産生を誘導すると考えられる。代表者らは反復ストレスによるミクログリアの活性化にToll様受容体(Toll-like receptor; TLR)2/4が重要であることを示している。そこで、反復ストレス後のTLR2/4二重欠損マウスの脳内のPGE2産生を調べたところ、反復ストレスによる皮質下領域でのPGE2産生はTLR2/4二重欠損マウスで減少した。この結果は、皮質下領域ではTLR2/4依存的にミクログリアでPGE2が産生されることを示唆する。実際、反復ストレスはTLR2/4依存的にCOX1や2-アラキドノイルグリセロールからのアラキドン酸遊離に関与するモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL) mRANの発現量を増加した。さらに、MAGL阻害薬であるJZL184の投与は皮質下領域でのPGE2産生を抑制し、また、反復ストレスによる社会忌避行動の誘導を抑制した。
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