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2019 年度 実施状況報告書

S1Pシグナリングによる癌炎症環境における悪玉エクソソーム成熟機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K08594
研究機関神戸大学

研究代表者

梶本 武利  神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードスフィンゴシン1-リン酸
研究実績の概要

本研究課題では、癌の増悪におけるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)シグナリングの役割を分子レベルで明らかにし、癌の増悪を分子レベルで制御する新たな治療法開発への道筋をつけることを目的としている。
これまでの研究成果により、癌の増悪におけるS1Pの標的としてプロテインキナーゼCζ(PKCζ)を同定した。そこで令和元年度は、PKCζの細胞内での活性化を蛍光共鳴エネルキー移動(FRET)の原理を用いたレポーターによりリアルタイムにモニターすることで、細胞内でのS1Pの作用を間接的に検出する手法を開発した。本手法を用いて様々な癌細胞株におけるS1Pの作用を検出したところ、乳癌や扁平上皮癌など多くの癌細胞種においてS1Pの作用が高くなっていることが明らかとなった。また癌細胞ではS1Pが恒常的に産生されており、その結果としてS1PのターゲットであるPKCζの恒常的な活性化が形成され、このS1P-PKCζシグナリングの高い恒常活性が癌細胞のアポトーシス抵抗性を制御することを見出した。この結果は、スフィンゴシンキナーゼによるS1Pの産生が癌増悪の律速となることを示した点で重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和元年度は、本研究課題の最終的な目標である「S1Pシグナリングを標的とする副作用の少ない選択的抗癌剤等による癌増悪の分子レベルでの制御」に向けて、癌の増悪におけるS1Pシグナリングの役割をS1PのターゲットであるPKCζとの関連から明らかにすることを試み、癌増悪におけるS1Pの重要性、癌増悪の新規分子メカニズムとしてのS1P-PKCζシグナリングの同定に成功した。

今後の研究の推進方策

今後は、本研究課題の最終的な目標である「S1Pシグナリングを標的とする副作用の少ない選択的抗癌剤等による癌増悪の分子レベルでの制御」に向けて、癌の増悪におけるS1P-PKCζシグナリングの下流ターゲット(アポトーシスやエクソソーム積荷ソーティングなど)の同定を推進する必要がある。また、これまでの研究成果を国内外の学術集会および論文により報告する。

次年度使用額が生じた理由

令和元年度に達成した課題は細胞を用いた実験系で必要十分な内容が多かったため、動物実験に必要な支出が下がった。また最終年度にこれまでの研究成果を国際学術集会および論文にて発表する予定であったが、当該国際学術集会の開催は2020年度となり、また論文も2020年度になるため、補助事業期間の延長および次年度使用額の申請を行った。令和2年度の研究費は、国際学術集会での研究成果の発表、および論文掲載へ向けた追加実験のための主に消耗品費として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] University of California San Diego(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California San Diego
  • [雑誌論文] Apical-basal polarity inhibits epithelial-mesenchymal transition and tumour metastasis by PAR-complex-mediated SNAI1 degradation2019

    • 著者名/発表者名
      Jung HY, Fattet L, Tsai JH, Kajimoto T, Chang Q, Newton AC, Yang J
    • 雑誌名

      Nature cell biology

      巻: 21 ページ: 359 - 371

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41556-019-0291-8

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 非典型プロテインキナーゼCのスフィンゴシン-1リン酸による新規活性化メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      Kajimoto, T., Caliman, A.D., Tobias, I.S., Okada, T., Pilo, C.A., Van, A.A., McCammon J.A., Nakamura, S., Newton, A.C.
    • 学会等名
      第71回 日本細胞生物学会大会
  • [学会発表] キナーゼ活性イメージングとドッキングシミュレーションの融合によるPKCシグナリング研究の新たな展開2019

    • 著者名/発表者名
      梶本 武利
    • 学会等名
      第92回 日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規プロテインキナーゼC活性化レポーターにより明らかとなるアポトーシス回避の分子メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      梶本 武利、キャリマン アリシャ、トバイアス アイリーン、岡田 太郎、パイロ ケイラ、ヴァン アンジェラ、マキャモン アンドリュー、中村 俊一、ニュートン アレキサンドラ
    • 学会等名
      第60回 日本組織細胞化学会総会・学術集会
  • [学会発表] New departure in the research of protein kinase C signaling with a combination of live-cell imaging of kinase activity and in silico docking simulation2019

    • 著者名/発表者名
      Taketoshi Kajimoto
    • 学会等名
      Kobe University-UC San Diego Joint Symposium on Life Science, Computational Science, and Structural Engineering
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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