研究課題/領域番号 |
17K08595
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足立 直子 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (70604510)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ADRB3 / GPCR / S-palmitoylation / lipidation / アドレナリン受容体 |
研究実績の概要 |
これまでに、beta3アドレナリン受容体(beta3AR)の活性化はマウスモデルにおいて、肥満・Ⅱ型糖尿病における病態の改善効果があることが知られており、また、特異的アゴニストであるミラべグロンはヒトの過活動膀胱治療薬として使用されており、膀胱平滑筋を弛緩させ畜尿機能を促進させることが知られている。しかしながら、各種アゴニストによるヒトでの肥満・Ⅱ型糖尿病に対する改善効果は極めて限定的であり、げっ歯類とヒトのbeta3AR には機能的な違いがあることが示唆されてきた。本研究では、ヒトbeta3AR のみをもつ遺伝子改変マウスを作製し、ヒトbeta3AR の機能解析をヒト化マウスを用いて行うことを目的としている。 本年度は、ヒト化beta3ARのモデルの作製と、ヒト・マウスbeta3ARの機能調節の違いについて、研究を進めた。遺伝子組換えマウスの作製は現在進行中であるが、機能解析については種間の差について翻訳後修飾の一つであるパルミトイル化修飾に注目し解析した。①数の違い:ヒトbeta3ARでは4カ所、マウスでは1か所のパルミトイル化修飾を有する。②ヒトbeta3ARではパルミトイル化修飾数により受容体の活性化状態が異なるが、マウスでは影響を受けない。③パルミトイル化修飾は受容体の細胞質膜上発現を上昇させる:ヒトではパルミトイル化状態の有無により大きな影響があるが、マウスではその差は小さい。④細胞質膜上での受容体半減期への影響:ヒトではパルミトイル化されることで受容体の半減期が伸びるが、マウスでは影響をうけない。このように、ヒトbeta3ARでは、パルミトイル化状態により、受容体の活性化・発現量が調節されているが、マウスbeta3ARではその影響は少なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではbeta3ARのヒト化マウスを作製し、beta3ARの関連疾患(肥満・Ⅱ型糖尿病・過活動膀胱)のメカニズムを明らかにすることを目的としている。2ヒット2オリゴ法を用いて、ヒトbeta3AR遺伝子をプロモーター領域ごとノックインした遺伝子改変マウスの作製を行い、PCRにてヒトbeta3ARポジティブの産仔を得た。しかしながら、現在までに、ヒトbeta3ARのタンパク質を発現している系統は得られておらず、継続して遺伝子組換えマウスの作製を行っている段階である。 マウスの作製と並行して、本年度は培養細胞を用いてヒトとマウスbeta3ARの機能解明を進め成果を論文にて報告した(Adachi et al, 2019 JBC)。これらの解析結果は、遺伝子組換えマウスをもちいて関連疾患の解析を行うにあたり、非常に重要な情報をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、遺伝子組み換えマウスの作製を急ぎ、得られたヒト化beta3ARマウスを用いて、各種疾患に対する応答の違いを野生型と比較解析する。加えて、ヒト・マウスbeta3ARの機能解析を進めることで、マウス個体を用いた研究への限界を明らかにし、ヒト化beta3ARマウスの解析につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組み換えマウスの作製に対する支払いが必要なため。
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