研究課題/領域番号 |
17K08603
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10323106)
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研究分担者 |
倉沢 和宏 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30282479)
JUTABHA Promsuk 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90541748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / 破骨細胞 / アミノ酸飢餓応答反応 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
LAT1 は、主に必須アミノ酸を細胞内に取り込むアミノ酸トランスポーターで、その発現は正常個体においては発現組織が限られている一方、細胞癌化に伴い大幅に上昇するとされる。しかし、正常細胞におけるLAT1 の機能についてはほとんど解明されていない。本研究はLAT1 の破骨細胞における役割について詳細に解析する目的で遂行される。ヒト末梢血中の単球をin vitroでサイトカインにより破骨細胞に分化させてLAT1 の発現を調べたところ、単球におけるLAT1 の発現は極めて低い一方で、単球から破骨細胞への分化に伴い、LAT1 の発現が大幅に上昇することを見出した。また、LAT1 特異的阻害剤JPH203により、in vitroにおける末梢血中単球から破骨細胞への分化が有意に抑制された。さらにJPH203による破骨細胞の骨吸収能もJPH203により抑制されることがin vitroにおけるピットフォーメーションアッセイにより明らかとなった。以上の結果から、LAT1はヒト破骨細胞の分化及び機能に必須のアミノ酸トランスポーターであることがわかった。 LAT1 特異的阻害剤によるヒト破骨細胞抑制の分子メカニズムを解明する目的で、マイクロアレイアッセイを行った。その結果、LAT1の基質アミノ酸の欠乏により破骨細胞における遺伝子発現が大幅に変動することがわかった。これらの結果をもとに、LAT1阻害薬によって発現が変動する遺伝子を複数同定し、その中の一つの遺伝子産物に対する抗体の存在下でヒト末梢血単球を破骨細胞に分化させたところ、破骨細胞への分化が大幅に抑制された。以上の結果から、この因子は破骨細胞分化に必須であり、LAT1阻害により発現が低下することで破骨細胞分化が抑制される可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、平成29年度中にLAT1 が破骨細胞における主要な必須アミノ酸トランスポーターであることの確認、およびLAT1 の破骨細胞分化における重要性について明らかにする予定であったが、これらの課題はLAT1 特異的阻害剤を用いた実験によりほぼ達成できた。また、マイクロアレイを用いた実験手法により、LAT1 阻害によって発現が低下する新規破骨細胞必須因子も同定でき、当初の研究計画で平成30年度以降に遂行予定であったLAT1 阻害剤による破骨細胞抑制の分子メカニズムの一部が解明できた。以上の状況から、本研究課題の進捗はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
LAT1 特異的阻害薬のin vivoにおけるリウマチ疾患の治療効果を確認するために、リウマチ疾患モデルマウスを用いた実験を行う。モデルマウスを用いたリウマチ発症の実験法はすでに確立できたため、このマウスにLAT1 特異的阻害薬の投与を行い、リウマチ症状に対する軽減効果を、関節の炎症、組織学的所見、あるいはCTスキャンによる骨密度測定などをもとに評価する。また、LAT1 阻害剤による破骨細胞抑制のさらなる分子メカニズムを明らかにするために、LAT1 阻害剤によって変動する破骨細胞の細胞内代謝産物を質量分析装置により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の購入時には極力、低価格のものを選択し、また実験が円滑に進んだために再現性を確認するための実験を最小限に抑えることができたことなどから、次年度使用額が生じた。繰越し分は動物実験や質量分析などの実験規模を拡大するために使用する予定である。
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