研究課題/領域番号 |
17K08603
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10323106)
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研究分担者 |
倉沢 和宏 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30282479)
JUTABHA Promsuk 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90541748) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
本課題のこれまでの研究結果により、アミノ酸トランスポーターLAT1特異的阻害薬によるヒト末梢血単球の破骨細胞分化に対する阻害作用が明らかとなった。本年度はさらにそのメカニズムを解明することを目的として、LAT1特異的阻害薬による破骨細胞に対する遺伝子発現変動をマイクロアレイを用いて調べた。その結果、これまでに破骨細胞分化への関与が報告されていなかったサイトカインの発現が減少することがわかった。そこで、このサイトカインに対する中和抗体の存在下でヒト末梢血単球を破骨細胞に分化させたところ、分化が抑制されることが明らかとなった。さらに、この中和抗体によって破骨細胞の分化を促進する遺伝子の発現が減少し、逆に分化抑制遺伝子の発現が上昇することもわかった。これらの結果から、LAT1特異的阻害薬により破骨細胞分化が抑制されるメカニズムとして、このサイトカインの産生減少による可能性が高いことが示唆された。以上の研究結果は、LAT1のヒト破骨細胞分化における重要性を示すとともに、これまで未報告であった新たなヒト破骨細胞の分化のメカニズムの解明につながる重要な知見となる可能性が高い。また、LAT1特異的阻害薬のin vivoにおける破骨細胞分化抑制効果を検証するための予備実験として、マウスの破骨細胞に対するLAT1特異的阻害薬の影響をin vitroの実験系で確認した。しかし驚いたことに、LAT1特異的阻害薬はマウス単球の破骨細胞を促進した。この結果から、LAT1はヒトとマウスの破骨細胞において相反する機能を有する可能性があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究結果においてLAT1特異的阻害薬がマウスの破骨細胞に対して促進効果を示すことが明らかとなったため、本阻害薬のin vivoにおける破骨細胞分化抑制効果を検証することは不可能となった。しかしその一方で、研究実施計画で目的としていた本阻害薬によるヒト末梢血単球の破骨細胞分化に対する阻害作用のメカニズムについて、マイクロアレイなどを応用した実験結果によりその一端が解明されつつある。したがって、おおむね順調に新進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画では、LAT1特異的阻害薬のin vivoにおける破骨細胞分化抑制効果を間接リウマチモデルマウスを用いて検証することを予定していたが、in vitroの予備実験においてLAT1特異的阻害薬がヒトとマウスの破骨細胞に対して相反する作用をもたらす可能性が高いことが示唆されたため、本実験は中止とすることとし、今後の研究は、ヒト破骨細胞に対するLAT1特異的阻害薬の作用に絞る。研究内容として、LAT1特異的阻害薬による破骨細胞分化抑制と、マイクロアレイで得られた遺伝子発現変動との関連性についてさらなる検証を行うことで、アミノ酸による破骨細胞分化の分化制御のメカニズム解明に向けた実験に重点を置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を購入する際は、同程度の品質のもので極力、低価格のものを選択して購入するなどしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、LAT1阻害薬のヒト破骨細胞に対する抑制効果のメカニズムを解明するために、これまでの実験結果で判明したLAT1阻害薬により発現変動する遺伝子の破骨細胞分化における機能的役割の解析に使用する。
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