研究課題/領域番号 |
17K08606
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
伊豫田 拓也 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 准教授 (80465715)
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研究分担者 |
中川 嘉 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (80361351)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マクロファージ機能調節 / 細胞外マトリックス / テネイシンC / 炎症 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
現在、日本人の死亡原因疾患の第1位はがんであり、2位に心臓病、3位に脳卒中と続く。しかし心臓病・脳卒中の殆どが動脈硬化に起因する事実を考慮すれば、実質的な死亡原因1位は動脈硬化といえる。
申請者らは動脈硬化を含む種々炎症関連領域に特異的かつ一過的に高発現する細胞外マトリクス分子、テネイシンC (TNC)に注目し、これまでに本分子が内包する生理活性領域の1つ(領域 X )が、マクロファージの発現形質調節を介して動脈硬化を進展させることを見出した。本病態は慢性炎症性疾患であることから、H30年度は主として TNC 内部領域 X への長期暴露によってマクロファージに生ずる応答に注目した。
過去に申請者らは TNC 内部領域 X 刺激 3-5 時間後にマクロファージに生ずるフェノタイプ変化を評価してきた。一方で今年度は刺激後 16-48 時間に生ずる変化を標的とした評価を行なったところ、mRNA レベルにおいて炎症性因子である IL-1b や MIP-2 の発現上昇が観察された。これらはいずれも領域 X 刺激数時間後では観察されない変化であった。IL-1b は NF-kB シグナルを経て非活性型タンパクとして発現したのち、部分分解を経て活性体となるが、今回タンパク質レベルにて行った評価では活性型 IL-1b の発現上昇が、領域 X 刺激マクロファージにおいて認められた。IL-1b の部分分解は NLRP3 を介したインフラマソームの形成・活性化により調節されるが、 領域 X 刺激マクロファージでは NLRP3 mRNA の発現上昇も観察された。これらの結果は IL-1b の発現とその活性化に関わる2つの独立する経路が、TNC 内部領域 X の刺激によりマクロファージで活性化され、結果として炎症の惹起とその長期的維持に関わる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H30年4月より所属先を変更した。現所属先の山口東京理科大学薬学部はH30年度に新設の学部であり、研究環境を含めた種々立ち上げに多くの時間と労力を割く必要があった。それゆえに研究費の一部を研究環境の整う翌年度に繰越す形とし、R1年度により多くのソースを集約する形にしている。
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今後の研究の推進方策 |
TNC 内部領域 X がマクロファージに生じさせる現象として、炎症性サイトカイン IL-1b の発現及びその活性化の亢進を見出したが、IL-1b の発現と活性化は独立した2つの異なるメカニズムにより調節されているが、両メカニズムと領域 X の接点については全く不明である。そこで領域 X への長期暴露がいかに IL-1b 発現・活性化系を刺激するのか、そのメカニズムの解明に取り組む予定である。
一方で昨年度完遂できなかった動物モデルについて実験個体数を上積みするとともに、 バイオマーカーとしての本領域の可能性について検討の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年4月より所属先を変更した。現所属先の山口東京理科大学薬学部はH30年度に新設の学部であり、研究環境を含めた種々立ち上げに多くの時間と労力を割く必要があった。それゆえに研究費の一部を研究環境の整う翌年度に繰越す形とし、R1年度により多くのソースを集約する形にしている。
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