研究課題/領域番号 |
17K08608
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中瀬古 寛子 東邦大学, 医学部, 講師 (80408773)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心毒性 / 抗不整脈性 / 催不整脈性 / ヒトiPS細胞由来心筋細胞 / 電気生理学 / 電気薬理学 |
研究実績の概要 |
慢性骨髄腫の治療薬で、低分子チロシンキナーゼ阻害薬であるdasatinibを用いて、ヒトiPS細胞由来心筋細胞における興奮伝導(FPDと伝導)、刺激電流の閾値、有効不応期と有効不応期からFPDを引いた差分(ms):post-repolarization refractorinessの変化を解析した。その結果、dasatinibは逆頻度依存性と濃度依存性のないFPD延長を示し、催不整脈性が低いことを明らかにした。同時に生体では急性投与でtroponin Iを増加させたが、急性毒性の指標である細胞死誘導能は示さないことを明らかにし、原著論文でCardiovasc Toxicol. 2020 Feb;20(1):58-70.に発表した。 次にMED64システムと高速度デジタルCMOSカメラ(KP-FM400WCL, セルモーションイメージングシステムSI8000シリーズ、SONY、東京)を組み合わせ、電気的ペーシング(刺激周期長500-1400 ms)で誘発した拍動の再分極時間、伝導速度と収縮のモーションベクトルの同時測定を行った。インキュベーター内のO2濃度を95%と20%(空気)の2種類で行い、心筋の伝導興奮と収縮に対する溶存酸素濃度の影響をコントロール、溶媒のみ、10 nM (-)-isoproterenol存在下で比較実験を行った。その結果、2次元細胞シートで方向性のないヒトiPS細胞由来心筋細胞シートはそれまで収縮運動に関し、陰性の階段現象を示すことが報告されてきたが、ペーシング位置を制御することによって、ヒト生体心と同様に収縮運動の陽性階段現象、弛緩運動の頻度依存性促進を導入できることを見出した。その成果はFrontiers in Cell and Developmental Biologyに投稿し現在査読中である。 これらの研究成果によって、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートを用いた薬物の催不整脈性リスクの評価指標に加え、収縮弛緩の変化を解析する基盤が出来たと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30~R1年度にかけて、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートを用いる薬物誘発性の収縮弛緩の修飾を評価するにあたって、ペーシング位置や収縮ベクトルの解析方法を調節することによって、今まで再現できなかった収縮力の陽性階段現象を再現することが出来た。これによって、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートを用いた薬物の催不整脈性リスクの評価指標に加え、収縮弛緩の変化を解析する基盤が出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
R1年度に開発した方法を用いて、薬物存在下でのヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの収縮弛緩の変化の実験と解析を継続して行い、その利点と問題点を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度末に行った実験の解析とその投稿に必要な費用として繰り越した。またR1年度に開発した方法を用いて、薬物存在下でのヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの収縮弛緩の変化の実験と解析をその利点と問題点を明らかにするための研究を継続しているため、その費用として繰り越した。
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