研究実績の概要 |
2020年度は以下の研究を行った。 1)抗がん薬:低分子チロシンキナーゼ阻害薬であるdasatinib, sunitinib, imatinib, lapatinib, sorafenib, nilotinibによる、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートにおける興奮伝導、収縮弛緩運動の変化を比較するために、MED64システムと高速度デジタルCMOSカメラ(KP-FM400WCL, セルモーションイメージングシステムSI8000シリーズ、SONY、東京)を組み合わせ、同時測定を行い、細胞外電位と収縮弛緩運動のモーションベクトルの取得を行った。比較対象として、呼吸鎖複合体IIの阻害薬thenoyltrifluoacetone(TTFA)を用いた。 2)カンゾウ(甘草):動悸のある患者の治療に用いられる炙甘草湯や苓桂朮甘湯に含まれるカンゾウの作用機序を明らかにするため、カンゾウの主要成分グリチルリチン酸の主要代謝物であるグリチルレチン酸 0, 0.1, 1, 10 ug/mL存在下で1)と同じ同時測定システムを用いてヒトiPS細胞由来心筋細胞シートにおける細胞外電位、有効不応期および収縮弛緩運動の変化を測定した。その結果、Na+,K+およびCa2+チャネル遮断作用が認められたが、K+チャネル遮断作用よりCa2+チャネル遮断作用が優位であること、Na+チャネル遮断作用は頻度依存性が高く、解離速度が速い性質を持つことが示された。 3)急性の高血糖による心筋への作用を解析するため、1)と同じ同時測定システムを用いて細胞外電位と収縮弛緩運動の測定を行った。浸透圧が10%上昇する程度のglucoseまたはmannitolを加えた。双方とも同程度に細胞外電位持続時間を延長させ、初期の伝導(半径300 um未満)を抑制した。一方、収縮速度は増加した。
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