研究課題
がん化学療法における心毒性は抗がん剤の容量規制因子となり、患者の予後に大きな影響を及ぼす。我々はこれまでに、がん抑制遺伝子p53とその下流に位置するTIGAR(P53-induced glycolysis and apoptosis regulator)が心不全の進展に大きな影響を及ぼし、心筋ミトコンドリアの質とオートファジーの制御が重要であることを報告してきた。そこで本研究課題ではまず、がん化学療法における心筋障害のメカニズムを薬理学的に解明し、またがん患者を対象とした観察型臨床研究を進めることを目的に研究を開始した。基礎研究においては、前年度までにBdh1やPPAR-γなど代謝に関わる因子が心不全の進展に重要な役割を果たすことを報告し、また新たに心不全に関わる未知の蛋白9030617O03RiKを発見した。がん関連血栓症に着目して血管に関する研究を進め、オートファジーと酸化ストレスの抑制は心筋だけでなく肺高血圧の進展も阻止することを報告した。がん細胞と心筋細胞は多くの代謝経路を共有する。そこで、がんにも心臓にも普遍的なエネルギー代謝研究を進めた。核酸成分であるピリミジン塩基の生合成中間物質の一つであるオロト酸を、肥満や糖尿病モデルマウスに投与すると、p53を抑制して膵β細胞のミトコンドリアエネルギー代謝が改善した。オロト酸は乳清に含まれるありふれたものであり、臨床に展開しうる介入候補の一つと考えられた。臨床研究においては、当初予定していたがん患者対象の観察型臨床研究は、コロナ感染拡大のため多くの期間で中断を余儀なくされた。替わりにex vivoで可能な研究を実施し、酸化ストレスを非侵襲的に計測する方法を開発、がん関連血栓塞栓症で問題になる抗凝固薬の影響について研究を進めた。今年度は新たに将来の臨床展開を考慮し、トクホ食品や血管に関するいくつかの症例研究を進めた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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