研究課題/領域番号 |
17K08612
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
井手 聡一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (30389118)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 側坐核 / 報酬系 / 嫌悪 / 情動 / 依存 / 介在ニューロン / ドパミン |
研究実績の概要 |
痛みにより引き起こされる不安、嫌悪、抑うつなどの不快情動は、生活の質(QOL: Quality of life)を低下させ、精神疾患・情動障害の引き金ともなるため、情動的側面をも考慮した疼痛治療が求められている。本研究では、快・不快といった情動の両方向性に深く関与すると考えられる側坐核に着目し、痛みによる情動変容における側坐核内介在ニューロンの役割を明らかにすることを目的とし、痛みの情動的側面に対する役割について詳細な解析を行う。本年度は、Gタンパク質活性型内向き整流性カリウムチャネル(GIRKチャネル)に遺伝子変異を有するweaver 変異型マウスを用い、快・不快情動生成の変動を、条件付け場所嗜好/嫌悪性試験を用いて検討を行った。Weaver 変異型マウスではメタンフェタミン誘発の場所嗜好性が消失していることを見いだすと共に、weaver 変異型マウスにおけるc-fosタンパク発現変化を指標とした神経活動興奮の組織化学的検討の結果、メタンフェタミン投与による神経活動興奮に側坐核内領域特異性(矢状切片における分布の局在)が見られる結果を得つつあり、引き続き解析を進めている。また、側坐核内のアセチルコリン介在ニューロンの役割を明らかにするために、新規合成されたムスカリン受容体M4サブタイプ選択的作動薬の効果を検討したところ、メタンフェタミン処置によって引き起こされる場所嗜好性が消失するという結果も得つつある。また、ムスカリン受容体M4サブタイプ選択的作動薬の単独投与によって、場所嫌悪性を示す傾向も見られている。このため、引き続き、当該作動薬が情動に与える影響に関して検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画当初では、側坐核内介在ニューロンの役割を検討するために、当該神経を特異的に欠損する研究を初めに行う予定であったが、共同研究先より、新規合成されたムスカリン受容体サブタイプ選択的作動薬を入手できたため、こちらを用いた当該神経の活性化による影響の検討を先に進めている。全体として、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、情動発現における側坐核内介在ニューロンの役割を明らかにすることを目的として、特にACh性介在ニューロンを活性化あるいは欠損させ、行動解析を進める。また、weaverマウスにおける側坐核内領域特異性は、研究成果として纏まりつつあるため、早期に論文発表できるよう優先的に解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
神経系特異的欠損マウス作製のための、イムノトキシン標的法に用いる試薬を初年度に計上していたが、共同研究先における新規リガンド合成が想定より早く行われたため、計画を変更し、イムノトキシン標的法は次年度以降へ持ち越したため、次年度使用額が生じている。最終的には、当初予定の通り、該当実験手法に必要な試薬の購入を行う。
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