研究課題
今年度は、前年度検証を終えることができなかった野生型マウスを用いたCL-P1を介したCRP、C1qによる補体活性化について「C3ステップ」までについて検討を行った。野生型マウス(C57BL/6マウス)にCRPを接種し、抗CL-P1、CRP、C1q抗体を用いて蛍光免疫染色を行い、蛍光顕微鏡にて共局在を確認することができた。さらに、ペントラキシンファミリーのSAPおよびPTX3についても同様の検討を行いCRP同様に機能することを確認した。研究計画では、補体制御因子Factor Hノックアウト(CFH KO)マウスを用いたCL-P1による補体活性化の「MAC形成ステップ」の証明およびCRPの接種による細胞障害の確認、CFH KOマウスとCL-P1 TGマウスの交配により血管障害モデルマウスの作製を行う予定であったが、9月に発生した北海道胆振東部地震により、マウスを用いた実験が困難となった。また、in vitroでの細胞実験も並行して進めていたが、停電により培養中の細胞も冷凍保存中の細胞株も全て死滅したため、復旧のためかなりの時間を要してしまった。動物実験は再開の見通しがたたないため、先ずはin vitroでの細胞実験として計画していたCL-P1 過剰発現ヒト血管内皮細胞を作製により疾患の状況を再現してそのメカニズムの証明を行うことにした。今年度はヒト血管内皮細胞HUVEC(臍帯静脈)を用いてすでに作成済みのCL-P1 発現ベクターを導入してCL-P1 過剰発現ヒト血管内皮細胞を作製し、CRP 、SAPまたはPTX3にヒトCFH欠損血清を添加することにより、細胞障害の再現を試みた。ヒト血管内皮細胞におけるCL-P1 過剰発現は確認できたので、引き続き細胞障害の再現を試み、メカニズムの解明を進めていきたい。
4: 遅れている
前年度のからの遅れを取り戻すべく、研究を進めたが、9月に発生した北海道胆振東部地震での長時間の停電により、実験中の細胞や冷凍保存していた細胞株も全滅したため、復旧にかなりの時間を要した。さらに、動物実験を進めていたが、こちらも全て中止せざるを得ず、計画も大幅に変更することになった。次年度が最終年度である為、本研究では動物実験は環境が整い次第今後行うこととし、実験計画に挙げていたin vitroでの計画を遂行することにした。
引き続きヒト血管内皮細胞にCL-P1を過剰発現し、CRP 、SAPまたはPTX3にヒトCFH欠損血清を添加することにより、in vitro での細胞障害の再現を試みる。ヒト血管内皮細胞についてはHMVEC(臍帯静脈)以外のHAEC(大動脈)、HCAEC(冠動脈)、HMVEC(微小血管)、さらに加齢黄斑変性を想定しヒト網膜毛細血管内皮細胞(HREC)も入手して検討を行う。補体活性化ついては、各種抗ヒト補体抗体を用い、さらに、CFHを含む各種制御因子の欠損血清を用いて継時的な活性化機序を観察し、そのメカニズムを明らかにする。また、「MAC形成ステップ」については、これまで細胞上に形成されたMACの詳細な形成像が報告されていないので、電子顕微鏡を用いて細胞上でのMAC形成の状況を電子顕微鏡の画像と蛍光抗体や金コロイド抗体を用いた局在を合わせて明らかにする。
9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で、実験計画に遅れを生じたため、次年度繰越し、実験計画も変更して行うことにした。
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Clinical and Applied Thrombosis/Hemostasis
巻: 25 ページ: 1-6
10.1177/1076029618821189
血液内科
巻: 78 ページ: 184-191