研究課題/領域番号 |
17K08615
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
大谷 克城 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (90396367)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫学 / 補体 / コレクチン / スカベンジャー受容体 / 血管障害 |
研究実績の概要 |
今年度の研究の推進方策に挙げたが、マウスを用いたCL-P1を介した補体活性化メカニズムの解明が、諸事情にて困難となった。そこで、よりin vivoに近い状態で検証する目的で、遺伝子発現に汎用される細胞ではなく、血管内腔側にある血管内皮細胞を用いて、現象を確認し、血管炎など関連性が想定される疾患のメカニズムの解明に取り組むことにした。ヒト血管内皮細胞にCL-P1を過剰発現し、CRP 、SAPまたはPTX3にヒトCFH欠損血清を添加することにより、in vitro での細胞傷害の再現を試みた。ヒト血管内皮細胞についてはHMVEC(臍帯静脈)、HAEC(大動脈)、HCAEC(冠動脈)、HMVEC(微小血管)、さらに加齢黄斑変性を想定しヒト網膜毛細血管内皮細胞(HREC)を用いて検討を行った。細胞により反応性は異なったが補体活性化が確認できた。検証については、CL-P1については、C末端に配したmycタグに対する抗体、活性化に関与する補体に対する抗体を用い、さらに、CFHを含む各種制御因子の欠損血清を用いて継時的な活性化機序を観察し、最終的な補体の活性化は膜障害性複合体(MAC)を抗C5b-9抗体で検出することができた。さらに過剰発現ではなく血管内皮細胞自体に発現しているCL-P1による、活性化を検討したが、確認することができなかった。実際に炎症などがおこる際には、CL-P1の発現が上昇していることが想定されるため、そのような条件下での検討を進めたが、結果には至っていない。動物実験によるin vivoでの検討についても再考したが、この研究期間では遂行することが難しいため、最終結論は出すことができないが、今後研究が進められるよう、モデルマウス作製は別途進めることにした。研究の遅れにより、今年度で研究を終了できなかったが、期間延長申請を行い、承認されたことより、次年度研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は、9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で、実験計画に遅れを生じ、今年度は、これまでの遅れを取り戻せるよう研究を進めたが、細胞株のコンディショニングにかなりの時間を要した為さらに遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に研究を終了できなかったため延長申請し、承認されたことより、今年度は下記の研究を進める。 CL-P1過剰発現ヒト血管内皮細胞で証明されたCL-P1を介した補体活性化を、CL-P1過剰発現細胞でなく、炎症性サイトカインや過酸化脂質などにより、炎症状態を誘導することにより、CL-P1の発現動態および補体活性化を検討する。その対照として、CL-P1欠損ヒト血管内皮細胞をゲノム編集技術などにより作成し、比較を行い、炎症性疾患における補体活性化のメカニズムをin vitroであるが検討を行う。 また、前年度行う予定であった「MAC形成ステップ」における細胞上に形成されたMACの詳細な形成像の観察を、電子顕微鏡を用いて行い、蛍光抗体や金コロイド抗体を用いた局在を合わせて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年の北海道胆振東部地震の影響で実験計画の遅れと、実験計画の変更により、さらに研究が遅れたため、次年度への繰越しが生じた。主に実験に用いる物品費に使用し、一部学会発表のための旅費に充てる予定である。
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