研究課題
タンパク質キナーゼGCN2はアミノ酸飢餓により活性化し、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化を介した翻訳制御によるストレス応答を行う。リン酸化eIF2αはcap構造依存的な翻訳抑制を行うと同時に、アミノ酸合成酵素・ アミノ酸輸送体などを統一的に制御する転写因子ATF4の翻訳を活性化させる。酵母においてGCN1がアミノ酸飢餓によるGCN2活性化に必須であることが示されているが哺乳類におけるGCN1の機能は分かっていなかった。GCN1はRWD結合ドメイン(RWDBD)を有しており、本ドメインを介してGCN2以外にも IMPACT、DFRP2/DRG2と結合する。そこで我々はRWDBD欠失マウス(GCN1ΔRWDBDマウス) の作製・解析を行った。GCN1ΔRWDBDマウス由来胎仔繊維芽細胞の解析により、哺乳類GCN1も酵母と同様にアミノ酸飢餓応答に必要であることが明らかとなった。GCN1ΔRWDBDマウスは成長遅延を呈し出生直後に呼吸不全により死亡した。これは正常に出生・生育できるGCN2欠失マウスよりも重篤な表現型であり、GCN1はRWDBDを介したGCN2経路非依存性の機能を担うことを示唆する。またGCN1ΔRWDBD MEFはG2/M 期進行を制御するCyclinB1、Cdk1の発現減少、Cdk阻害因子p21の発現増加を伴うG2/Mアレストを起こし、細胞増殖の低下を示した一方で、GCN2欠失MEFはG2/Mアレストおよび細胞増殖の低下を示さなかった。GCN1結合因子DRG2のノックダウン細胞はGCN1ΔRWDBD MEF細胞と酷似した表現型を示すことから、GCN1とDRG2が協調的に細胞増殖 制御に関与する可能性が考えられる。以上よりGCN1はGCN2を介したアミノ酸飢餓応答のみならず、GCN2経路非依存性に細胞増殖制御を行うことで正常な胚発生に寄与することを新規に見出した。
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