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2018 年度 実施状況報告書

NRF1糖鎖修飾を介したプロテアソーム活性調節機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K08618
研究機関東北大学

研究代表者

関根 弘樹  東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50506285)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード転写制御 / タンパク質分解 / 翻訳後修飾
研究実績の概要

タンパク質の恒常性維持(プロテオスタシス)は正常な細胞機能にとって極めて重要であり、その破綻が多くの疾患の分子基盤となっていることが明らかにされている。そのため細胞は、プロテアソーム阻害剤で細胞を処理した場合、プロテアソームサブユニット遺伝子群がフィードバック的に転写レベルで活性化する、プロテアソームバウンスバック反応が起こり、細胞内プロテアソーム活性を調節することが知られている。これを担う中心的な転写因子としてNRF1が知られてい
る。転写因子NRF1は多段階でその活性が制御されることが知られているが、核内での活性化機構については明らかではなかった。そこで私たちは、NRF1の核内複合体の取得により、NRF1とOGT/HCF1複合体が結合することを明らかとした。OGTはタンパク質の翻訳後修飾であるO-GlcNAc化を施すO-GlcNAc転移酵素であるが、NRF1機能発現にO結合型糖鎖修飾(O-GlcNAc化)が必須であることを私たちは発見した。O結合型糖鎖修飾は様々な生物学的イベント(栄養状態、細胞周期、日周性、加齢)において、変動することが知られており、本研究では、とりわけグルコースなどの栄養状態でNRF1はタンパク質レベルで活性制御されることが明らかとなった。またがんにおけるプロテアソーム依存性を支える基盤がOGT-NRF1であることを明らかとした。多くのがんがプロテアソームの活性に、その生存を依存しているため、プロテアソーム阻害剤はプロテアソーム依存性がんの治療への治療が予想されるが、実際には多発性骨髄腫などの一部のがんに、その使用は限定されている。しかしながら私たちの発見は、OGT阻害が効果的に固形がんに対してもプロテアソーム阻害剤を使用できることを示唆する結果であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NRF1複合体の新規構成因子の中で、プロテアソームーサブユニット遺伝子の活性化において、OGT複合体のより詳細な結合様式を明らかにすることができた。OGT/HCF1複合体のうちHCF1が直接NRF1に結合することを、大腸菌で作製したリコンビナントタンパク質を用いて示すことができた。さらにNRF1側のドメインについても決定し、Neh6Lと呼ばれる領域に結合することがわかった。これにより複合体結合の制御ができるようになり、NRF1とHCF1/OGT複合体との結合欠失変異体の作製に成功した。この変異体は、プロテアソームの活性化能を失っていた。またChIPアッセイによりOGT/HCF-1複合体をノックダウンしたところ、NRF1のプロテアソーム・サブユニット遺伝子プロモーター上へのクロマチン結合が減弱することも明らかとした。また他のNRF1複合体構成因子についても、ノックダウン後の活性制御において重要であることを明らかとした。またOGT阻害によるプロテアソーム阻害剤の抗がん作用の増強を、Xenograftモデルにより明らかとすることができた。さらにはデータベースを用いたOGTとプロテアソームサブユニット遺伝子群との相関も調べ、乳がん、大腸がんでタンパク質の発現相関を明らかにできた。

今後の研究の推進方策

OGT/HCF1複合体が、とりわけがんにおいてプロテアソームの転写活性に必要であることを明らかとしたので、さらにヒト患者検体における重要性を明らかとしたい。またO-GlcNAc化サイトを明らかとできたので、特異的認識抗体の作製も同時に進めたい。

次年度使用額が生じた理由

次年度は本助成金の最終年度にあたり、さらなる研究の加速に加えて、成果発表も積極的に行うことになるので、請求分と合わせて全額使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Lactate dehydrogenase C is required for the protein expression of a sperm-specific isoform of lactate dehydrogenase A.2019

    • 著者名/発表者名
      Dodo M, Kitamura H, Shima H, Saigusa D, Wati SM, Ota N, Katsuoka F, Chiba H, Okae H, Arima T, Igarashi K, Koseki T, Sekine H, Motohashi H.
    • 雑誌名

      J Biochem.

      巻: 65 ページ: 323-334

    • DOI

      10.1093/jb/mvy108.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] O-GlcNAcylation Signal Mediates Proteasome Inhibitor Resistance in Cancer Cells by Stabilizing NRF1.2018

    • 著者名/発表者名
      Sekine H, Okazaki K, Kato K, Alam MM, Shima H, Katsuoka F, Tsujita T, Suzuki N, Kobayashi A, Igarashi K, Yamamoto M, Motohashi H.
    • 雑誌名

      Mol Cell Biol.

      巻: 38 ページ: e00252-18

    • DOI

      10.1128/MCB.00252-18.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] O-結合型糖鎖修飾によるがん細胞のプロテアソーム阻害剤の分子機構2018

    • 著者名/発表者名
      関根弘樹
    • 学会等名
      第6回がんと代謝研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] O-GlcNAcylation signal confers resistance to proteasome inhibitors on cancer cells by increasing NRF1 stability.2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sekine.
    • 学会等名
      The 77th Annual Meeting of the Japanese Cancer Association
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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