研究課題
システインのチオール基にイオウ原子が過剰に付加(ポリスルフィド化)したシステインパースルフィド(CysSSH)に代表される活性イオウ分子種が、生体内において高いレベルで生成していることがわかってきた。さらに、タンパク質のシステイン残基もポリスルフィド化していることが示された。しかしながら、ポリスルフィド化タンパク質の同定やその動態・機能については不明な点が多く残っている。本研究では、網羅的・特異的かつ定量的ポリスルフィド化タンパク質スクリーニングシステムを構築し、生体内ポリスルフィド化タンパク質の構造とその生成動態、および、機能を解明することを目的とした。本年度は、各種質量分析装置を用いて、タンパク質システイン残基のポリスルフィド化が豊富に存在していることを示した。さらに、タンパク質システイン残基の酸化修飾を特異的かつ定量的に解析するシステムを新たに構築した。この解析システムを用いて、過酸化水素等の酸化剤処理により、タンパク質ポリスルフィドが酸化されたシステインパーチオスルフィン酸(CysSSO2H)やパーチオスルフォン酸(CysSSO3H)の生成レベルが増加することを明らかにした。さらに、タンパク質システイン残基の不可逆的な酸化であるCysSO2HやCysSO3Hに対して、タンパク質ポリスルフィド化機能の一つとして、CysSSO2HやCysSSO3Hは、そのS-S結合を還元することで過度な酸化による損傷からタンパク質を保護していることを見出した。これらのことから、タンパク質のパースルフィド化は、生命の機能維持に極めて重要な役割を果たしていることが示された。
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