最終年度は以下の解析を行った 【Nup融合遺伝子産物が核-細胞質間物質輸送に与える影響の解明】 核膜孔は約30種類の核膜孔タンパク質nucleoporin (Nup)が相互作用して形成される巨大複合体である。変異型Nup98及びNup214を含む融合遺伝子産物は主に核に局在し、野生型Nup98及びNup214とは異なる局在様式を示す。そこで、核に局在する変異型Nupが他の核膜孔タンパク質の局在に影響を与えるのかを明らかとするため、変異型Nupを発現する患者由来細胞株及び変異型Nupを過剰発現させた培養細胞において複数の核膜孔タンパク質の細胞内局在を観察した。その結果、Nup62、Nup133など一部の核膜孔タンパク質が、正常とは異なり核に分布する割合が増加していることが明らかとなった。同時に、核膜上のそれらのタンパク質の輝度の減少が認められた。昨年度までの研究から、Nup98及びNup214を含む融合遺伝子産物発現細胞では核外輸送因子(Exportin1-7)の細胞内局在に変化が見られている。核外輸送因子が局在変化する分子機構については不明であるが、今回の実験結果から、野生型Nupの局在変化がこれに関与している可能性が考えられた。 研究期間全体を通じ、白血病でみられるNup98、Nup214融合遺伝子産物は①他のNupの細胞内局在に影響を与えていること②様々な核外輸送因子の細胞内局在に変調を引き起こすことを明らかにした。細胞内の輸送異常が細胞のがん化を引き起こす可能性を提案する分子基盤を明らかにした点が本研究の意義である。
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