研究課題/領域番号 |
17K08621
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
原 太一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00392374)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / 大脳発生 / 神経幹細胞 / γ-secretase / Notchシグナル / タンパク質品質管理 / リソソーム |
研究実績の概要 |
本研究課題は、申請者らのゴルジ体に存在する異常膜タンパク質の新たな品質管理システム(初期ゴルジ品質管理機構)の発見に基づき、その生理的役割と分子機構を明らかにし、その破綻によって発症する疾患の病態解明に繋げることを目的としている。 昨年度までの研究から、初期ゴルジ体品質管理機構の分子選別装置として機能するRer1の大脳特異的欠損マウスを作製し、①大脳サイズが著しく減少する、②不安様行動が減少する、③神経幹細胞数が減少することを見出した。また、Rer1がγ-セクレターゼ複合体の量的制御に関わることを明らかにした。 本年度は、Rer1欠損による大脳発生異常の分子機構を明らかにすることを目的に研究を行った。その結果、Rer1を欠損した大脳では、脳内のγ-セクレターゼの量と活性が減少しており、神経幹細胞の未分化性を制御するNotchシグナルが低下し、神経幹細胞の増殖・維持に異常を生じることが示唆された。また、Rer1欠損細胞を用いた解析から、Rer1遺伝子を欠損するとγ-セクレターゼの一部が組み立て完了前に小胞体以降に搬出されてしまい、リソソームへ運ばれ分解されることが明らかとなった。以上の結果より、大脳においてRer1の機能を欠損させると、γ-セクレターゼの細胞膜量が減少し、神経幹細胞の増殖・維持に関わるNotchシグナルの不全が起こると考えられた。またその結果として、大脳形成異常や行動異常を引き起こしている可能性が示された。 以上の研究成果をまとめ学術論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初期ゴルジ品質管理機構の生理的役割と分子機構を明らかにするという本研究の目的に対し、大脳発生におけるRer1の生理的重要性を見出し、その分子機構としてγ-セクレターゼ複合体の成熟に関する分子メカニズムを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初期ゴルジ品質管理機構の関わる疾患の予防・治療法の開発に関する研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも初期ゴルジ品質管理機構の生理機能と分子機構に関する研究がスムーズに進んだため、次年度に関連疾患の予防・治療法に関する研究を加える必要があると判断した。このため、本研究目的を遂行するにあたり、次年度使用を計画した。
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