低分子G蛋白質であるRasは幅広い細胞内プロセスを調節することが知られている。これまでにRasに結合する蛋白質は数多く同定されており、その中にはRASの活性化制御に関わるものやRasの下流で機能するエフェクター分子などが知られている。RAS association domain family(RASSF)蛋白質はその名の由来通り、RASに結合するエフェクター分子として機能すると考えられてきた。 RASSF6の研究について二つの進展があった。RASSF6にはRbとその脱リン酸化酵素との相互作用を橋渡しするスキャフォールド活性があることが示された。さらに、RASSF6がポリコーム群蛋白質複合体構成因子であるBMI1に作用することが示された。本研究は平成30年にMolecular and Cellular Biology誌に報告された。一方、RASSF6の生理活性におけるUNC119の役割について検証を行った。UNC119はRASSF6と相互作用することによってRASSF6-MDM2-p53の経路を制御することが判明した。本研究は平成30年にCancer Science誌に報告された。 最終年度では、RASSF6と相互作用する核内蛋白質BAF60aに着目し、その役割について詳細な研究を行ってきた。この核内蛋白質はクロマチンリモデリング因子複合体の一つであることから、RASSF6がクロマチンリモデリング過程における制御に関与していることが期待される。RASSF6の多面的作用の研究から、UNC119によるKRASの細胞内輸送の制御が腫瘍抑制を担うことが判明した。これはKRASの機能を制御する新たな腫瘍抑制機構であり、RASSF6がもつ多面的な分子作用として提示できることが期待される。
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