研究課題/領域番号 |
17K08627
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低分子量Gタンパク質 / 心血管疾患 |
研究実績の概要 |
低分子量Gタンパク質は、様々な臓器で必須の分子であり、別の多くの分子と相互作用して細胞内シグナルネットワークを形成し、それぞれの臓器の機能発現に関与している。本研究では生体内最大の臓器とも言われる血管に着目し、低分子量Gタンパク質シグナル系が、生体内での血管の構築・維持にどのような役割を担っているか、直接的に解析するため、低分子量Gタンパク質の一つであるRhoAに関して、Cre-loxPシステムを利用し、コンディショナルノックアウトマウスを作製した。具体的には、血管内皮細胞特異的にCreを発現するTie2-Creマウスと、RhoA遺伝子内に2つのloxPサイトを有するRhoA-floxマウスを掛け合わせて、血管内皮細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスを作製した。このコンディショナルノックアウトマウスは、胎生致死であった。現在、その原因について解析中である。 一方、血管平滑筋細胞特異的にCreを発現するSM22-CreマウスとRhoA-floxマウスを掛け合わせて、血管平滑筋特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスを作製した。このコンディショナルノックアウトマウスは、メンデルの法則通りの割合で成体となった。コントロールマウスと比較して、外見上の見分けはつかなかった。血行動態に関する予備的実験では、コントロールマウスと比較して、脈拍数は変化ないものの、血圧は若干低くなる傾向にあった。免疫組織学的解析により、動脈の平滑筋層でRhoAの発現が欠失していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において無事に、血管内皮細胞および血管平滑筋細胞におけるRhoAコンディショナルノックアウトマウスを作製できたことは、今後のin vivo解析に向けた大きな進展である。上述のように、血管内皮細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死であること、一方、血管平滑筋細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスの血行動態に変化が見られることから、RhoAの血管における重要性が伺える。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスについては、なぜ胎生致死となるのかそのメカニズムについて解析を行っていく。その際、胎生致死となる時期を出来るだけ正確に突き止め、その時期と血管の発生段階と比較し、RhoAが血管内皮でターゲットあるいは相互作用する分子を同定する。これらの分子とRhoAとのシグナル伝達系が、血管内皮細胞を中心とした血管発生にどのように関わっているか明らかにする。 血管平滑筋細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスについては、心血管系に圧負荷をかけることでより著明な変化が見られるか検討する。具体的には、アンジオテンシンIIを持続的に過剰投与することで高血圧状態とする。このような高血圧マウスでは、一部で、解離性大動脈瘤が生じるが、その頻度や形態についてコントロールマウスと比較する。もしコンディショナルノックアウトマウスで、解離性大動脈瘤形成の頻度が高くなるようであれば、平滑筋のRhoAがどのように血管への物理的負荷に対して保護的に作用しているか、そのシグナル伝達機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンディショナルノックアウトマウスの作製が想定よりも安価にできたため。次年度使用額については、より複雑で費用がかかると想定されるin vivo実験に使用する予定。
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