研究課題
低分子量Gタンパク質は細胞内で発現し、100種類以上の分子からなる大きなファミリーを構成している。本研究ではその中でもアクチン線維の制御に大きく関わるRhoA着目し、この分子が血管を形成する細胞内でどのように機能して、血管の構築・維持に関わっているのか、そのメカニズムを解析した。血管、特に、動脈を構成する主な細胞として血管内皮細胞と血管平滑筋細胞がある。これらの細胞におけるRhoAの作用機構をin vivoで解析するために、血管内皮特異的または血管平滑筋特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスを作製した。血管内皮特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスは、胎生12日目までに全例致死となった。その原因として、コンディショナルノックアウトマウスでは体節間血管の伸長が不完全であることと、頭部血管叢の分枝が著明に減少していることを突き止めた。血管平滑筋特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスは、メンデルの法則に従って出生した。外見上、コントロールマウスと比較して差異は認められなかった。このコンディショナルノックアウトマウスに動脈瘤形成を誘導する薬剤を負荷すると、コントロールマウスと比較して、動脈瘤の発生や動脈瘤破裂が有意に増加した。その原因として、RhoA欠損による血管平滑筋細胞の外部圧力に対する脆弱化、平滑筋組織内での炎症反応の亢進が関係していることを明らかにした。逆に、炎症を抑制することで、RhoAコンディショナルノックアウトマウスにおける動脈瘤形成を抑制できた。さらに、ヒト大動脈瘤サンプルにおける血管平滑筋細胞の様態に関する検討も行った。
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