研究課題/領域番号 |
17K08639
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中嶋 弘一 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00227787)
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研究分担者 |
趙 虹 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (10596183)
國本 浩之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80372853)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | STAT3 / 活性化/非活性化サイクル / pY705-SH2 結合 / pS727-依存的非活性化機序 / コンフォメーション変化 / CRM1非依存的核外輸送 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
STAT3は、細胞質と核間を刺激と関係なくシャトルしているが、IL-6などで活性化されたJakキナーゼにより、Y705にリン酸化を受けるとpY705-SH2間の結合により安定化した平行型2量体となり、核内に滞在し、標的遺伝子群の転写を起こす。2018年度には、活性化を受けたSTAT3の非活性化機序を詳細に検討し、全体像の理解とpS727依存的な非活性化機序を明らかにした。野生型STAT3は刺激後60分から90分の間に脱リン酸化とCRM1-非依存的な核外輸送が起こり、再度活性化/非活性化のサイクルを起こす。NTD同士の結合とpS727依存的機序が非活性化の最初の引き金となる。特にY705以降P715までのCTT領域が自らのSH2と結合することと互いのCTT間での結合がpY705-SH2結合の安定化に必要であることを示した。pS727依存的にこの結合が弱まることが重要であった。この機序に基づく阻害剤開発方法について国内特許を出願した。論文は、改訂中である。STAT3がpS727依存的に非活性化を早めるという仕組みは、活性のある転写因子がその細胞の持つ環境への応答ということに有用であると考えられた。現在、刺激前後、および非活性化過程でのコンフォメーション変化についてのモデルを作りつつあり、STATという転写因子群に共通した活性化/非活性化過程の構造変化についての理解が進んできた。NTD-NTD間の結合とpS727依存的なCTT修飾がpY705-SH2結合を弱め、構造変化を招き、それ以降にどのような構造変化が起こっていくことがチロシン脱リン酸化とCRM1依存的や非依存的な核外輸送をもたらすのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核内STAT3の運命決定の全体像の把握が済み、それらを実際に担っている構造変化についてもおおよその理解が進んできた。特段、問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
非刺激時に存在するSTAT3コンフォメーションを明らかにする。STAT3のN-terminal domain間の結合の種類とそれらの役割を明らかにする。機能的な役割と構造上の役割を同時に検討することで、刺激後の変化、非活性化過程での構造変化、チロシン脱リン酸化と2種類に核外輸送系の使い分けを明らかにしていく。 NTD-NTDと結合に関わる修飾、特にリン酸化とそのキナーゼの同定、CRM1非依存的な核外輸送系の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、核外輸送系の同定作業、核外輸送を阻害する化学物質探索系の確立、STAT3非活性化過程制御キナーゼの同定など最終年度としては大きな仕事が残っており、経費と時間が必要となった。
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